『末期ガンになったIT社長からの手紙』藤田憲一 著 幻冬舎

IT業界で活躍されていた藤田憲一さんのエッセイ。

この方のブログを見ればわかりますが、2006年10月に36歳で死去されています。
テレビでも何度か闘病記が放送されたようですが、初めて癌が見つかったのが2004年7月ですから、それからたった2年余り。若い人の癌の進行は早いとはいえ、本当にあまりにも早い・・・・・。

この方が患っていたのは、スキルス性胃癌。普通、胃癌は、表面の粘膜に発生しますが、スキルス性の場合、胃壁の奥深くから始まって侵食し、表面に出てきたときにはかなり広がってしまっている厄介な癌です。アナウンサーの逸見政孝さんも同じ癌でした。彼と同じく藤田さんも、胃はもちろん、周辺の臓器まで摘出したそうです。

癌はともかく、私が気になったのは、強迫的な彼の性格特性でした。
「動いていないと死んでしまう」
「仕事をしていないと具合が悪くなる」
読んでいて、こんな観念ばかりが伝わってきました。

とにかく、小さいときから、一足飛びに結果を求めるタイプだったそうで、目標を立てたら、それに向かってまっしぐら。大変優秀な方だったので、学校でも仕事でも、それが実現できていたんですね。
病気になる前までは、ほとんど休み無く仕事して、癌がわかっても冷静に引き継ぎして、入院中もインターネットで癌についての情報をせっせと集め、「治す」ことに全力を傾ける。

そんな彼の姿勢に、医師や周囲は「こんな強い癌患者は見たことがない」と驚嘆しました。もちろん、癌告知直後や再発直後は、パニックになっていますが、その後は「葛藤」がほとんど見られないのです。そんなヒマもなかったくらい、進行が早かったのかもしれませんが、彼のエッセイからは「結果」ばかりで「プロセス」がほとんど見えてこないのです。

「これからやりたいこと」リストも、
・スキーとスノボに行く
・船に乗って海に行く
・レーシングカーに乗る
・馬に乗って全速力で走る
なんだか「スピード狂」なのかしら、と思うことばかりで・・・・・。ブログを読むと、亡くなる間際にも、鈴鹿サーキットに行こうとしていたようです。文字通り「駆け抜けた」一生だったように思います。

彼は言いました。
「癌は、寂しがり屋の彼女のようだ。痛みで僕の気を引こうとする」

彼は、癌になる少し前、仕事の忙しさを理由に、付き合っていた女性と別れています。当然、妻子はいませんでした。
もしかしたら、彼女も癌も、彼に言いたいことがたくさんあったかもしれません。彼がもし、その言葉に耳を傾けていたら・・・・・。

亡くなる前に、彼は自分の人生を振り返って、「立ち止まることへの漠然とした不安」を感じていたと言い、病気になって「走るのをやめてもいいんだ」「頑張らなくてもいいんだ」と、思えるようになったそうです。
私は、なぜ彼がこんなに「生き急ぐ」性格になったのか、生育過程が気になります。

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by june_h | 2009-08-14 09:48 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)