虚構の劇団 第3回公演「ハッシャ・バイ」@座・高円寺

「虚構とは、何ですか?」
「虚構とは、起きているときに見る夢です」

「現実とは、何ですか?」
「現実とは、あなたが選んだ虚構です」

・・・・・なんてわかりやすい戯曲だったんだろう!

何故、第三舞台が、鴻上さんの舞台が、人気があったのか。
何故、私が、鴻上さんの舞台に惹かれたのか。

トラウマに触れるのだ。
鴻上さんの作品って、演劇じゃなくて、精神療法みたいなのだ(笑)。
だから、鴻上さんの舞台は、身に覚えが無い人にはワケがわからないだけだが、身に覚えが有る人は、鴻上さんに「すがりついて」しまう(笑)。

鴻上さんは昔からいつも言っていた。
「お客さんの潜在意識とガッチリ握手をするような舞台を作りたい」と。
鴻上さんは、意識しているのか無意識なのかはわからないけど、これは、つまり、そういうことなのだと思う。

子供を愛せない母親。
子供を支配する母親。
子供を殺そうとする母親。
自分を生きようとしない母親。
自分も母親に支配された母親。
母親を許せない自分。
母親を愛せない自分。
自分を許せない自分。
自分を愛せない自分。

こんな人物像がコラージュのように、夢で、虚構で、現実で、いくつも重なり合いながら、一人一人の「自分が見たい現実」を作りあげている。
この舞台、現実世界と虚構の世界が、どんどん入れ替わるが、どの場面が現実なのか夢なのかは、ぶっちゃけあんましこだわってもしょうがない。
大事なのは、それぞれのキャラの内面や感情の流れ。

「家庭、学校、病院。この3つは、本来は、自立するためのシステムであるはずなのに、抑圧するためのシステムになってしまっているんです!」

このセリフに、鳥肌が立った。

母親に傷つけられた人々が、海の向こうにあるという「母親のいない世界」を求めて海辺に集まる。「母親が作り上げた世界」から出たいと必死に何度ももがくが、結局、元いた場所に戻ってしまう。

どうすれば、ここから出ていける?

鴻上さんは言った。それは、
絶望すること→手放すこと→希望
なのだと。

絶望の果てに主人公が辿り着いたのは、自分が受け入れ難い「現実」から、全速力で逃げていたという「真実」だった。
自分を苦しめていたのは、結局自分自身だったのだ・・・・・。

私は「虚構の劇団」の旗揚げ準備公演から見ているが、実は内心、鴻上さんに腹を立てていた。
前途ある若者に、自分の数十年前のトラウマを何度も演じさせて恥ずかしくはないのか、と(笑)。

初めて鴻上さんの舞台を観たとき、一瞬で好きになったはずなのに。
第三舞台の戯曲を、次から次へと、貪るように読んだのに。
最近は、いい加減、鴻上さん自身がトラウマから解放されればいいのにって、思うようになっていた(^^;

でも、今回の戯曲は「潜在意識とガッチリ握手をする」ものだ。
この戯曲は、鴻上さんが28歳のときに書いたものだ。
28歳の鴻上さんは、天才だ。
いや、鴻上さんは、ただ、「逃げなかった人」だっただけなんだ。

逃げずに向き合う人は、少ない。
大多数の人は、ラクをしようとする(ラクにはならないけど)。

鴻上さんはずっと、人を安易にラクにしようとする、宗教やイデオロギーを憎んできた。
それと同時に、ラクを求める人間の弱さと欺瞞を知っていたはずだ。
鴻上さんは、ラクになろうとしなかった。

鴻上さんが出した答えが正しいかどうかは、誰にもわからない。
でも、鴻上さんがやってきたことは正しい。

だからこれからも、誰がけなそうと、無視しようと、自分が信じる道を進んでほしい。
今回の舞台を見て、そう思った。
ハッシャ・バイハッシャ・バイ


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Tracked from 超おすすめ+カルト☆特撮.. at 2009-08-23 16:31
タイトル : 劇『ハッシャ・バイ』虚構の劇団座・高円寺1(A16)20..
私立探偵のもとを訪ねた女の依頼は、毎晩同じ夢で見る砂浜を探すことだった。やがて、毎日探し歩くうちに二人は夢に取り込まれ、どこまでが現実かわからなくなる…。鴻上さん主宰の「虚構の劇団」第3回公演です。1,2回公演作は、ともに小劇団にまつわる話でしたが、今回...... more
Commented by ITOYA at 2009-08-23 16:46 x
こんにちは。
今回もTBありがとうございます。
今、千秋楽を見終わって高円寺のネットカフェでコメント書いてます。
今回のキーは、海と母親、旧人類への絶望と新人類への希望・・・「絶望の淵に落ちて受け入れること」でしょうか。
1,2回公演と少し傾向が変わって戸惑いましたが、昨日今日と観て、場面数の多さにも、とっても楽しみました。
特にこのメンバーでのダンスや、寸劇がとっても好きです。
今から来年2月が楽しみです。
Commented by june_h at 2009-08-23 17:49
ITOYAさん、コメントありがとうございます。
千秋楽、ご覧になったんですね!鴻上さんの芝居は、場面転換が確かに多いと思います。
役者さんたちのダンスも、だいぶ上手になりましたよね♪最初はぎこちなかった道成くんも、だいぶイタについてきた感じです(笑)。
来年2月の次回公演では「天使は瞳を閉じて」をやってほしいな~。
by june_h | 2009-08-22 14:29 | 観劇 観戦 コンサート レポート | Trackback(1) | Comments(2)