『言葉で治療する』 鎌田實 著 朝日新聞出版

朝日新聞に連載されていた医師 鎌田實さんの連載をまとめた本。
実際の患者さん達が、医師とのやりとりで経験した内容が多く記載されていますが、読みながら、私も怒ったり泣いたりしました。
医師が患者と向き合う上で、コミュニケーションがいかに大切であるか、ということがよくわかります。

患者さんの手記からわかるのは、治癒するプロセスで、特に慢性疾患や重病患者である場合、検査や薬だけでは不十分だということ。

たった一言、医師が心身を気遣う言葉をかけるだけで、患者はとても救いになるし、治らなかったとしても、とても感謝しています。
逆に、心無い一言が、患者の死期を早め、患者の家族が一生恨みを抱えることだってあるのです。
特に癌患者は、抑鬱状態になりやすいので、注意が必要です。

ある癌患者は、健康を保つために、散歩の時に歌を歌い、生活雑感を書いた手紙を友達に送り、毎日泳いでいると女医に報告すると
「周りがいい迷惑でしょうね。そんなに頑張るとアタマがおかしくなるわよ」
と言われたり。

月一回通院している、ある年配の患者は、
「年寄と貧乏人は、早く死んでくれと、国から通達が来ている」
と言われたり。

ドラマに出てくるイヤな医者も、ここまで露骨なセリフは言わないでしょう(- -;

もちろん、医師不足などによる過労などで、余裕が無いのはわかります。
でも、たった一言あるかどうかで、避けられたトラブルや訴訟沙汰もたくさんあるのではないかと思います。

また、偏見からなのか、患者や患者の家族が女性である場合、インフォームドコンセントが十分でないことが多々あるそうです。
夫が癌であることを知らされなかったある女性は
「本当のことを知っていたら、じいちゃんが外泊したとき、じいちゃんを一人にしないで、一緒にフトンのなかに入って昔話をしたかった」
と語っていました。切ないです・・・・・。

アンケートによると、家族を癌で亡くした方の、周囲の援助で最も嬉しかったことは、悩みや愚痴を聞いてくれたことなんだそうです。物質的援助ではなく、言葉がいかに大切か、この結果からもわかると思います。

私も、小さいときからいろんな医者に出会いました。思い返してみると、「良い医者」だと思ったのは、ちゃんと説明してくれたり、優しい言葉をかけてくれた人でした。

物心ついたときに出会ったのは、とても優しい歯医者で、小さい私にもわかるように、虫歯や治療器具について、親切に教えてくれました。それがきっかけで、私は病院や医者が大好きになったのです。
でも、中には無責任な医者や、診察中に一度も私を診ない医者もいました。
そのときは弱っていたので何も言えなかったのですが、今思い出しても怒りがわいてきます。

私の母が数年前、子宮筋腫になったときのこと。
医師に、筋腫を摘出するついでに、卵巣も将来的に癌になるリスクが高いから取ってしまおうと提案されました。
母は、どうしても取らないといけないのか?と尋ねると
「どうせただの肉のカタマリですから」
と言われたんだそうです。
卵巣摘出後は、一生ホルモン剤を飲まなくてはいけません。「ただの肉のカタマリ」なら、そんなことにはならないのに。
結局、母は納得できず、他の病院でセカンドオピニオンを求め、子宮摘出だけで済みました。
でも「ただの肉のカタマリ」と言われたことが何よりも、女性としてひどく傷ついたと今でも憤慨しています。

私が勉強しているホメオパシーでも、レメディを飲んでもらうだけではダメだと思います。何事も、信頼関係が大切!ということを、改めて痛感させてくれた本です。

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Commented by hayashi at 2010-02-07 12:44 x
juneさん、こんにちは。
励ましの言葉は力あるならば一言一句でも口にするべきだと思います。言葉の力はただ事じゃないですものね。

僕も癌にかかった時、慶応の渡邊先生が担当医だったのですが、この人は声と言葉の名医でした。
率直であったし、あきらめに厳しかった。引退されたそうですが残念です。

死もやむなしみたいな顔してた時に、顔真っ赤にして怒鳴られたのを懐かしく思い出しました。まさに命の恩人です。
Commented by june_h at 2010-02-07 20:16
hayashiさんに同感です!たった一言でも救われることは絶対にあります。でも、毎日忙しい医者のように、ストレスを抱えていたりすると、ポジティブな言葉をかけるのは難しいのかもしれません。また、褒め言葉や感謝を口にしない「言葉をケチる」人もいるようです。

そして、hayashiさん、素晴らしい先生に出会えて良かったですね!大切な体験を教えてくださってありがとうございます。
hayashiさんの体験から、単にポジティブな言葉をかけるだけではなくて「患者に希望を失わせない」ということが大事なのだとわかりました。大きなことを教わりました!本当にありがとうございます。
by june_h | 2010-02-04 21:05 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(2)