「だから演劇は面白い! 「好き」をビジネスに変えたプロデューサーの仕事力」 北村明子 著 小学舘

野田秀樹の劇団「夢の遊眠社」やNODA・MAPを支え、その他多くの舞台のマネジメントを手掛けたプロデューサーで「シス・カンパニー」の代表取締役 北村明子さんのエッセイです。

演劇で食べていくのは大変!というのは、今も昔も変わりません。
彼女はとにかく「好きな演劇を続けていく」ためには「演劇で食べていけるようにすること」が大切だと考えてきました。そのために、彼女が取った方策は、プロフェッショナルそのもの。

当たり外れのリスクが大きく、テレビや映画と違って、観客動員数も少なく、稽古に時間が掛かる演劇ほど、経営側にとって非効率なものはありません。演劇の経費は、どんぶり勘定になりがちですが、彼女は明朗会計で、きっちり利益を出すシステムを考えました。なので、スポンサーを集めまくってムダにセットを豪華にしたり、資金が足りないからと、チケット代を上げることもありません。
役者にも、チケットノルマを課すこともなくギャラを払い、稽古に集中できる環境を整えました。一方で、実力の無い役者には話し合って辞めてもらうなど、シビアになることも。役者と舞台の最善を考えての、つらい決断を迫られることも多いのです。

また、北村さんは、小さいときから歌舞伎や新劇に親しんでいたので、どんな舞台に魅力があるのか、よくわかっています。また、魅力が無ければ、たとえチケット代がタダでも、お客は来ないし自分も見たくないことを知っています。だからこそ、役者や舞台の価値を高める方針にしたのです。

以前は、テレビの役者と演劇の役者はハッキリ分かれていました。
彼女は、舞台で長く役者を続けるためには、メディアの力も重要と考え、テレビ界のプロデューサーを舞台に招待して役者の演技を見てもらい、テレビでも使ってもらえるよう積極的に売り込みました。
その結果、テレビに出た役者の人気が上がって舞台の観客動員数が増え、テレビドラマの役者も、演技力を鍛えるために、舞台に出るようになり、大きな相乗効果がありました。
今では、多くの舞台俳優がテレビドラマやバラエティで活躍する一方、アイドルも舞台に出演するようになりました。

読んでいて、とにかく、北村さんは演劇が好きなんだということが良くわかります。
「利益を出す」ことを重要視していますが、それはあくまで面白い舞台を作るため。「儲ける」ことが第一の目標ではありません。
また、舞台を成功させるまでのアクシデントさえ「楽しんで」いることがよくわかります。
役者が降板したり、チケットが全然売れなかったり。そんなときは、舞台の幕が上がるギリギリまで手を尽くします。「え?こんなことまでプロデューサーの仕事なの!?」と思うようなことまでやっています。舞台は、役者だけではなく、演出や脚本が大事だと思っていましたが、この本を読むと、プロデューサーも重要なんだということが良くわかりました。

私も何度か、シス・カンパニーのプロデュース公演に足を運んだことがありますが、どれも私にとって「アタリ」の舞台でした。

井上ひさし脚本の『ロマンス』の舞台をプロデュースして「また井上さんと組んで第二弾もやりたい!」とおっしゃっていましたが、叶わなくなってしまいました。北村さんも「自分にも残された時間は多くない」と考え、これからは、どれだけ好きな舞台を作れるかが勝負だとおっしゃっています。

「好きを仕事」にできても、その仕事をし続けるのには、努力を続けることが大事!
私の好きな演劇の「舞台裏」を知ることもできたし、学ぶことも多かった本でした。
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Commented by かすた at 2010-05-31 11:12 x
こんにちは^^ この本、ぜひ読んでみたいと思います。
私も、劇場に足を運ぶのがすきなのですが、最近ぐぐっと観劇回数が減ってしまいました。
自由なお金がたくさんある独身時代なら、当たり外れ気にせずいろいろチケットを買えたけれど、今は「この代金に見合う舞台しか見る気ないな」って感じかしら。
これだけ経営感覚に優れたプロデューサーが作り上げる舞台だったら、期待できそう・・・と思わされました。
Commented by june_h at 2010-05-31 18:58
かすたさん、コメントありがとうございます♪
私も以前は、かなり無差別に観に行っていましたが、だいぶ絞り込んでみるようになりました。
北村さんは、経営感覚も優れていますが、何より舞台がお好きな方なので、自分の好きな役者さんなら、何年もかけて、口説き落として出てもらうこともあるんだそうです。
シス・カンパニー主催の舞台は、役者さんたちに注目です♪
by june_h | 2010-05-29 11:18 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(2)