「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る アフガンとの約束」 中村哲×澤地久枝 岩波書店

ノンフィクション作家 澤地久枝さんによる、アフガニスタンで、難民に対する医療活動や水路建設をしている「ペシャワール会」代表 中村哲さんとのインタビュー集です。
「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る アフガンとの約束」中村哲×澤地久枝「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る アフガンとの約束」中村哲×澤地久枝
てっきりアフガニスタンのことが書いてあるのかと思ったのですが、最初の方は、中村さんの伯父に当たる作家の火野葦平さんのこと、ご両親のこと、故郷の北九州のことが語られていました。この方の故郷は、私の親戚が多く住んでいる場所なので、興味深かったです。今は大分さびれていますが(爆)、中村さんが小さかったときが、鉄工で一番栄えていたんじゃないかしら。

医師となった中村さんは、ハンセン病患者治療のため、アフガニスタンに赴任されます。
しかし、ソ連やアメリカによる度重なる軍事介入や、内戦によって疲弊していたアフガニスタンは、満足な医療設備はおろか、毎日の食糧にも事欠くありさまで、多くの難民や餓死者が出ていました。特に、チフスや赤痢などの腸管の感染症や、リウマチ熱による心臓弁膜症が多いのだそうです。中村さんは、まず、現地の人達が自給自足できることが大事だと考え、井戸掘りや水路建設にも取り組むことで、荒涼としたアフガンの地を、畑と緑に変え、数十万人の命を救いました。

中村さん自身はクリスチャンですが、イスラム教徒であるアフガン国民を助けることに、なんら抵抗も矛盾も感じていません。むしろ彼の根本的な考え方や信念は、「タリバン」と呼ばれる原理主義的な人達の方がよくわかってくれると言います。
タリバンは、危険なテロリストと報道されていますが、戦争によって悪化した治安を維持する、現地の自警団的な集団から起こったんだそうです。欧米で教育を受けたイスラム教徒が中心の「アルカイダ」とは性質が違います。
中村さんは、こう言います。
テロの温床は、実は先進国の病理です。だから、むしろアメリカの病は自分たちのなかにある。それを外に転嫁して、タリバン掃討だとか言っているわけです。

原因は内にある。
全くもってその通りだと思います。

戦争を企てる人は、いつも、安全な場所に居て、傷つくのは現地の一般市民。
最近思うのは、現地や現実を知らずに作った「机上の空論」が、どんなに大きな害悪になるのかということ。
中村さんも、現地の事情を知らない日本の政治家達の言葉に何度も傷ついてきたんだそうです。
でも、水路を作るための資金として、日本で16億円の寄付が集まったのです。日本もまだまだ捨てたもんじゃないのです。

地道な努力が信頼を築いていくのだと、改めて思いました。
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Commented by oomimi_usako at 2010-08-13 22:58
澤地さんの御本を、ちょっと集中的に読んでみたいと思っていたところでした。
参考になります、ありがとうございます!
Commented by june_h at 2010-08-14 17:26
>usakoさま
私は、この本で澤地さんを知りました。
この本は、澤地さんの著書というわけではありませんが、お二人とも、柔らかい物腰の中に「戦争は絶対NO!」という強い思いを感じました。
by june_h | 2010-08-13 18:32 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(2)