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【アメリカ映画】ハーブ&ドロシー【小さな夫婦の膨大なアートコレクション】

郵便局員の夫ハーバード(ハーブ)と、図書館司書の妻ドロシー。二人が30年間かけてコツコツ集めた現代アートのコレクションと、二人の人生を追ったドキュメンタリー映画です。

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二人は、共に美術が好きで、絵を描いていましたが、やがて、ドロシーの給料を生活費に充て、ハーブの給料を全額、美術品の購入につぎこむ、現代アートの収集家になっていきます。

選ぶ基準は、収入の範囲内であること、二人の住む1LDKのアパートに収まるものであること、そして二人が気に入ったものであること。
仕事のかたわら、二人は作品を求めて、美術展に、画廊に、アーティストのアトリエに、毎日のように足を運びます。有名無名を問いません。

二人がスゴいのは、優れた審美眼。作品そのものだけでなく、作品が作られたプロセスや、その作品に至るまでの変化をくまなく知った上で、一番気に入ったものを選ぶこと。
時には、アトリエの床に転がっていた習作を欲しがることも。でも、結果的にその作品が、一番良いものであったり、そのアーティストを知る上で重要な作品だったりするのです。アーティスト自身より、作品のことがわかってしまうようです。
アーティスト達の良き理解者でもあり、有名になった後も、二人を別格の存在として扱うアーティストも少なくありません。

やがて、二人の存在は、アートの世界で有名になっていきます。
ナショナル・ギャラリーの職員が二人のコレクションを預かりたいと申し出たとき、作品数は約4000点、大型トラック5台分にもなっていました。
「この小さなアパートに、こんなにたくさん入っていたなんて!」運送業者は驚いたそうです。

二人のコレクションが、ナショナル・ギャラリーに寄贈されることが報じられると、多くのアート作品が二人の元に送りつけられてきましたが、「気に入ったものしか集めないから」と、すべて送り返しました。
また、二人のコレクションに数百万ドルの価値があることがわかっても、一つも売ることはありませんでした。
ナショナル・ギャラリーは、「二人が将来、病気や怪我で困らないように」と、いくらかの謝礼を支払ったようですが、その謝礼も作品収集につぎこむ始末。
「二人は依存性だ」「貪欲だ」と、懇意にしているアーティスト達は、親しみを込めて二人を「賞賛」します。

この映画の監督は、日本人の佐々木芽生さん。
インタビューの切り取り方や、流れがとてもわかりやすかったです。
普通、映画館のスクリーンは、本編になると幅が長くなりますが、今回は、本編に入ると逆に短く、テレビのような比率に縮まったので驚きましたが(^^;

この二人に比べれば、金にあかせて手当たり次第に美術品を買いまくる金持ちや、美術品を投機目的にする投資家や、自分をよく見せるために美術品で家を埋める人は、「小せぇ」と思ってしまいます(笑)。
きっと二人は、これからも、集めた作品に一銭の価値が無くても気にせず集め続けるのでしょう。お金ではなく、「感動する心」に忠実な二人の人生。あっぱれ!です(^^)
Tracked from 梟通信~ホンの戯言 at 2010-12-05 20:41
タイトル : 奇跡の夫妻はとても”可愛い“  映画「ハーブ&ドロシー ..
学校なんて嫌い。 人に干渉されて生きたくない。 ひとりで図書館に通って美術書を読む。 夜は郵便局で仕分け作業、図書館の司書をしているドロシーはまさに“ベターハーフ”だ。 ひまさえあれば展覧会に、画廊に、アーテイストの家に、ソーホーに、いつも二人で。 有名になる、値段が上がる、そんなことは意味がない。 観て美しいと思ったか、月給で買えるか、1LDKのアパートに置いておけるか。 それが絶対的選択基準だ。 アーテイストの人間に興味があって、制作過程や成長過程をじっと見守る。 アーテ...... more
by june_h | 2010-12-05 12:19 | 映画 感想 | Trackback(1) | Comments(0)