「世界の翻訳家たち 異文化接触の最前線を語る」辻由美 著 新評論

欧州の、主にフランス在住の翻訳家たちのインタビュー集。
「世界の翻訳家たち 異文化接触の最前線を語る」辻由美「世界の翻訳家たち 異文化接触の最前線を語る」辻由美
「翻訳家」と言っても、経歴は様々だ。学校で翻訳の教育を受けた人、ギムナジウムで多言語教育を受けた人、全くの独学、などなど。
外交官や、通訳、教員などと兼務している人もいれば、元ダンサーという人も。ナチスの迫害から逃れるために翻訳を始めた、なんて人もいた。

翻訳に対する考え方も様々。原文のニュアンスをなるべく再現したいと思う人や、逆に、分かりやすく推敲した方が良いという人。脚注を充実させたいと思う人となるべく付けたくない人、などなど。

ヨーロッパには、多言語を話せる人も多いためか、複数言語の翻訳者も多い。しかし、彼らの共通認識は「平等に扱える言語など存在しない。それぞれの人によって主たる第一言語がある」。
それから「翻訳だけで食べていくのは大変だ」ということも一致する意見だ。

技術文書などの産業翻訳より、文学や詩などの出版翻訳は、時として難解で、手間も時間もかかるが、翻訳料は、翻訳の難易度によって決まるものではなく、ページ数や文字数によって決まるものなので、割に合わない仕事になってしまう。
しかも、作家よりも地位が低く見られがちだし、印税契約できることは稀だ。
また、仕事なので、時間的な制約もあるし、出版会社が勝手にリライトしてしまうこともある。
ロシアや東欧の翻訳家は、社会主義政権下では、かなり優遇されていたようだが、政権が崩壊し、市場原理が入ってくると、仕事の環境が厳しくなったという。

私も以前、仕事で、技術文書や、論文の翻訳に少し関わっていたことがある。
英日翻訳では、「英文を読んで理解する」ということと、「その英文の意味をわかりやすく日本語にする」ということには、大きな隔たりがあって、何度イライラしたかしれない。
また、日英翻訳では、私が書いた文章が、翻訳会社から戻ってきたとき、勘違いして訳されていたりすると「悪い日本語書いちゃってスミマセン」という気になる(笑)。

とにかく、共通しているのは、みんな、言葉が大好きだということ。
限られた状況の中、日々、言葉と格闘している。
この本は、15年前に出版されたものなので、インターネットが発達した今、仕事にどんなふうに活用しているのか、聞いてみたい。
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by june_h | 2011-01-19 17:46 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)