「健康帝国ナチス」ロバート・N・プロクター 著 宮崎尊 訳 草思社

いろんな意味で、背筋がゾッとした本です。
「健康帝国ナチス」ロバート・N・プロクター「健康帝国ナチス」ロバート・N・プロクター
「ナチスの医学」と聞けば、「毒ガス」とか「人体実験」とかが思い浮かぶと思います。
しかし、実は、ナチスドイツは、当時、類を見ない、国家的に健康政策を推進していた政権だったのです。
特に、予防医学と癌研究においては、当時の最先端を走っていました。

人工食品添加物に発ガン性があるということで、無添加の食品を推進したり。
精製した小麦粉は良くないということで、全粒粉のパンをナチス党員に支給したり。
収容所の囚人に、オーガニックの蜂蜜を作らせたり・・・・・。

癌撲滅と、禁煙運動には、特に熱心でした。
国民全員に、毎年、無料で癌検診を受けさせていました。
また、タバコは肺癌の原因になるということで、大々的に禁煙キャンペーンが行われました。
そのため、ナチスドイツが敗北した戦後、ドイツ人の肺癌患者の割合が大幅に減少したのは、ナチスの健康政策のためと言われているほどです。

しかし、ナチスがここまで熱心なのは、病気の人を治すためでも、国民の長寿のためでもありませんでした。

ナチスの狙いは、「体質や症状は遺伝する」という考えの下に、「優秀で勤勉なドイツ人を残す」ことや「劣等人種のユダヤ人を殲滅する」ことにあったのです。
また、たとえドイツ人であっても、精神病患者やアルコール依存症患者は「劣等遺伝子を持っている」ということで、「安楽死」という名の餓死に追い込まれていきました。

私は、最近の医学界で予防医学が軽視されてきたのは、薬を売るための製薬会社の陰謀だと思っていたのですが(笑)、予防医学の研究をしようとすると、ナチスの研究を避けて通れないというせいもあるかもしれません。
特に、ナチスによってドイツ医学界を追われたユダヤ人研究者達は、アメリカに亡命し、戦後の欧米の医学界で活躍しましたが、ナチスの医学研究など見たくもなかったのでしょう。

よく、健康食品や「体に良い食品」を過度に偏重することを「フードファディズム(food faddism)」と言うそうですが、ナチスは「フードファシズム(food fascism)」だったのですね・・・・・。
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by june_h | 2011-04-08 12:42 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)