「珍獣の医学」 田向健一 著 扶桑社

「動物病院」と言っても、獣医が大学で勉強しているのは、主に犬猫や家畜。
それ以外の動物は「エキゾチックアニマル」と呼ばれ、獣医によっては、こうした動物の治療を断ることもあるそうです。
著者の田向先生は、エキゾチックアニマルの治療にも熱心に取り組んでいます。
「珍獣の医学」 田向健一「珍獣の医学」 田向健一
カメがベランダからダイブして、甲羅がパックリ割れてしまった。
トカゲが卵詰まりを起こして、餌も食べないし排泄もしない。
ヘビがペットシートを飲み込んでしまった・・・・・。

先生の下には、いろいろな動物が持ち込まれます。
しかし、学校では、ほとんど勉強しない動物ばかり。
そこで、海外の論文を読んだり、ほぼ独学で治療。時には、独自の治療法を考え、オーダーメイドで診療道具を作ります。
先生ご自身も、動物が好きで、多くのエキゾチックアニマルを飼っています。
先生は、カエルの「顔色」がわかるのだそうです。

人間と違って動物は、診療中ももちろん、検査中もじっとしてくれません。
そのため、レントゲンを撮るにも全身麻酔です。
また、ハムスターや小鳥などの小動物は、手術をしようにも、わずかな出血が命取りとなります。

動物の治療には、もちろん神経を使いますが、人間の患者と違って厄介なのは、飼い主の存在。
飼い主の杜撰な飼い方や、エゴが、動物達を苦しめていることが多いのです。

昆虫を食べるスローロリスに、虫がイヤだから、ナッツや果物しか与えなかったところ、栄養失調になってしまった。
危ないから、サルの爪と歯を抜いて欲しい。
ウサギの首が少し曲がったので、安楽死させて欲しい・・・・・。

獣医の仕事は、動物を生かすこと。
それなのに、飼い主の要求を満たすためには「それ以外」の仕事をしなければならないこともあります。

先生は言います。
エキゾチックアニマルは、そもそも人間が飼うには難しいような特殊な環境でしか生きられない場合が多いのです。飼う人間の側にも、相応のことをする覚悟が必要です。
また、「なるべく自然な治療を」と、手術を拒む飼い主がいますが、人間に飼われているということ自体、既に「特殊」なのです。何をもって「自然」なのでしょうか?と。

苦労の多い仕事ですが、時には、飼い主の愛情と動物達の生命力に涙することも。
先生は、そんな中、日々治療に取り組んでいます。
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by june_h | 2011-05-19 12:41 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)