「予防接種は「効く」のか? ワクチン嫌いを考える 」 岩田健太郎 著 光文社

私の読解力が正しければ(というか、ほとんど文章そのまま抜粋ですが)、たとえばこんなことが書いてあります。

予防接種は「効く」のか? ワクチン嫌いを考える (光文社新書)

岩田 健太郎 / 光文社


■前書き
・予防接種(ワクチン)は、日本でもっともっと普及させなければいけない。
・この本でやりたいのは「ワクチン嫌い」批判ではない。
・現代医療の最大の功績が予防接種というのは医療の「常識」。だから、予防接種の否定は現代医療の趨勢に合っていない。でも、この本では「今の医療の常識だから」「アメリカでもそうやっているから」という語り口は、できるだけ避けたい。
・「科学的に証明されている」という言葉にも要注意。だから頭から鵜呑みにせず「疑う」ことが必要。

■本文
・感染症の減少の要因には、予防接種以外もあるが、「予防接種が役に立たない」というわけではない。
・日本のワクチン事情は、アメリカより20年遅れている。
・ワクチンは、絶対的な存在ではない。この世にリスクゼロのものは存在しない。
・ワクチンは、シートベルトのようなものである。事故に遭っていないからといってシートベルトをしないのはおかしい。
・予防接種を打っても打たなくても、多くの方には何も起きない。
・少数の人間にしか起きない副作用をクローズアップして報道するマスメディアはおかしい。しかし、副作用が起きた人間を無視してよいというわけではない。
・予防接種を行う価値があるワクチンは、「予防接種せずに病気になる人」が「予防接種を打って副作用で苦しむ人」より大きい場合である。
・ホメオパシーを信じる方にはワクチン嫌いが多いが、彼らのワクチンに対する認識には誤りがある。

■あとがき
・この本で言いたいのは「ワクチンを嫌いにならないでください」でも「さあ、みなさんもワクチン打ちましょうね」ということでもない。
・ワクチンの問題は、「正邪」ではなく「好き嫌い」の問題である。


読んでいて、岩田さんの、予防接種とワクチンに対する愛情と情熱を感じました。
好きならもっと「みなさん、ワクチン打ちましょう!」って言いきっても良いと思うのですけど、なかなかそうもいかない事情があるようで。

岩田さんは、「ワクチンの問題は、好き嫌いの問題」だと書いていますが、ある意味、それは正しいかもしれません。
ワクチンに賛成する人は「ワクチンは効果がある」という意見を集めたがるし、ワクチンに反対する人は、「ワクチンは効果が無い、危険だ」という意見を集めたがる。
どちらの意見の論文も書籍も、たくさん存在しますし、それぞれの立場から見て、逆の意見のものを読むと、突っ込み(たくなる)所が満載なのです。

思ったのですが、岩田さんは、たとえ自分や自分の家族に、予防接種による重篤な副作用が起きたとしても、「予防接種は、もっと打つべきだ」と考えるのではないでしょうか。

というのは、岩田さんは、感染治療学の教授。
この本を読んでいて、感染治療の(というか岩田さんの?)最優先事項は「パンデミックによる大量感染死を防ぐ」ことであると感じました。
予防接種することで、マジョリティが死ぬのを防ぐという考え(これは、予防接種が有効であるということが前提ですが)なので、その中で予防接種の重篤な副作用に苦しむマイノリティが出て来たとしても、極論すれば「たくさんの人が死んだわけじゃないから良かったじゃん」と考えるのだと思います(副作用が出た人の救済を考えなければならないと書いてもありますが、たびたび「少数の」「些細な」という言葉が出てきます)。

こうなると、「副作用に苦しむ我が子を助けたい」「目の前の患者を救いたい」という、個別の問題に目を向ける患者の親や医師とは、いくら話し合っても噛み合わないでしょう。

ちなみに、この本の帯コメントは、私が好きな内田樹先生が担当しています。
帯には、こう書いてありました。

岩田先生は人間的にはきわめて穏やかな人だが、知性の切れ味には寒気を覚えることがある


本の内容については、一切触れていないので、内田先生がこの本の内容についてどう思っているか、ぜひともお伺いしたいところです。
内田先生とは、御懇意のようですので、対談などあれば興味深いです。
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by june_h | 2011-06-04 22:24 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)