JIA建築セミナー2011「街場の建築論」内田樹×光嶋裕介 特別公開講座 その2

(セミナーつづき)
内田:人間が暮らしていくのに重要なのは、サイズの問題。
払っている税金が、目に見える形で何に使われているのか、貢献や達成感が見えないとだめ。だから、もっと小さくないとだめ。
共同体も建物もシステムも、今の日本は大きすぎる。小さくしないと、メンバーシップが見えてこない。
地震など危機的な問題があったときに、隣の人が誰だかわからないと大変。

光嶋:都市型の理想的な共同体とは?

内田:今までの社会システムは市場原理。金で買う。だから金を稼ぐ必要がある。
ネットで物を安全に買え、隣の人がわからなくてもやっていける社会は、今までの歴史でとても特殊だった。
貧しくて人とのつながりが大切な社会は、お金で買えない。
本来なら、商品として売り買いされるべきでない、公共的に共同体で作り上げなければならないものまで商品化してきた。人間関係とかシステムとか。だから、それを再構築しなければならない。そのためには、お金のやりとりを追い出さなければならない。手足を使って汗をかいて作らなければならない。
でも、実現が難しい地域がある。
本当の共同体は、先祖からの贈り物が脈々とあるもの。先祖から贈り物を受けとり、子孫へ伝えていくことが脈々とあるところは、つながりが強い。マンションの町内会とかは、物語や歴史がない。「使命感」「義務感」がないから難しい。利便性だけのつながりでは共同体はできない。

光嶋:日本はスクラップ&ビルドが激しくて、共同体存続は難しいのでは?

内田:西本願寺の建物はおもしろい。職人さんたちの遊び心が見えるから。この建物がずっと残ると思って作っているから。でも、今の建築には、そういうのがないよね。数十年のスパンでしかみていないよね。地震国だからとか言い訳しているから?数十年スパンなら、建て替えたら儲かるから?

光嶋:不動産的には、土地だけに価値があって、建物には価値がない。

内田:バブルの時は、建てても使わずに壊したりしたよね。投機のために、住まずに転売してたよね。そのときに建築業界のモラルがおかしくなったのでは?

光嶋:これから復興していくうえで、どんな建築にすればよいのか?

内田:町づくりとか都市計画とかって言葉はキライ。町って作るもんじゃないでしょ?町をつくるなんて傲慢。町って自然発生的に「できる」もんなんだよ。
人間が「こうありき」ってのに当てはめるのはおかしい。
長くたっている建物は、その建物に建つための必然性があった。
10世紀からある神社がある。それは、神社が「合う」土地だったから。人と異世界をつなぐ所とか。「場」自体が合う建物を引き寄せる。こういう建物は、長く続く。

光嶋:今の日本は病んでいるから、人間のいろいろなセンサーがオフになっている。魅力的な建築を作ることで、センサーを復活できるのでは?

内田:町づくりで、百貨店とかマンションとか作ろう!ってんじゃなくて、大仏を作ったら?お金をかけずに寄付で。ガウディの教会みたいに100年くらいかけて。市場原理を入れたらだめだよ。仕事帰りにふと見上げたら、大仏のお顔が見えて、思わず拝んでしまう、みたいな。
こういうのって、建築家から提案しないと。
建築家は、目に見えないものにも気を使わないとだめだと思う。町自体が持っている力ってあるでしょ?
江戸城は、朱雀門の位置が90度横になっている。90度、都と違う設計になっている。気を回すように作られている。
汐見坂と富士見坂のお店は繁盛した。下ったところに東京湾が見え、上ったところに富士山が見える場所。でも、町づくりとか言っている人は、そういうの、あんまりわかっていない。

光嶋:でも、クライアントに「霊的に良い土地だから」とか言っちゃうと、引いちゃう人もいます。
数値化したり具体的な説明をしないと納得してもらえない。目に見えることだけで、そのことを説得するのは、難しい。

内田:身体的な感覚で「あー、ここに何か作りたい」っていう建築家の感覚はとてもいいと思うけど。
細部まで一元的に決めるのはよくない。全部最初から決めないで、細かい所は現場で、臨機応変に。

光嶋:完璧な入れ歯がないように、完璧な建築はない。時間がたったら、どんどん状況も変化していくものだから。という説明をしてほしい。

内田:「入れ歯が合わない」人は、何個を作っても合わない。歯に合わせて咀嚼を変える人は、入れ歯が合う。なかなか合わない人は、何がきても同じような噛み方をする。
「結婚は入れ歯のようなものです」と、よく自分も結婚式でスピーチする(笑)。

(つづく)

JIA建築セミナー2011「街場の建築論」内田樹×光嶋裕介 特別公開講座@JIA館 その1
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by june_h | 2011-07-11 18:16 | 観劇 観戦 コンサート レポート | Trackback | Comments(0)