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「江戸のお金の物語」 鈴木浩三 著 日本経済新聞社

江戸時代をお金と経済の切り口から眺めてみると、世間を動かしていた「影の支配者」がわかったりして(^^;
「江戸のお金の物語」 鈴木浩三「江戸のお金の物語」 鈴木浩三
江戸時代、日本国内では、金・銀・銭の三つの通貨が使われていて、それぞれ、使われる場所も、使う人も、買える物も異なりました。非常に複雑で、帳簿もそれぞれの通貨ごとに付けられていたそうです。
それぞれの価値が海外の通貨のように異なっていて、変動するものだったことから、両替商が大きな力を持ちました。
両替商は、武士の年貢を換金したり、高利貸しをしたりして、次第に経済力をつけました。こうした商人達は、M&Aや先物取引など、高度な市場経済を築いていったのです。

武士は、江戸時代にたびたび起こったインフレやデフレをコントロールするために、為替や物価、貨幣の流通量を統制しようと試みましたが、市場原理には勝てませんでした。

貨幣経済が活発になるにつれ、武士は、大名から末端の御家人まで、商人からの借金まみれに。
幕府は、武士の「困窮」を助けるため、モラトリアム令を出して合法的に借金を踏み倒したりしましたが、ついに幕末には、完全に商人と武士の経済力が逆転してしまったのです。
江戸時代に市場を牽引していたのは、支配階級の武士ではなく、士農工商の一番下の身分である商人でした。

江戸時代の商人達の究極の目的は、「商売の永続」と「人の役に立つこと」。単なる儲けではありませんでした。
商取引には、何より「人と人とのつながり」と「信用」が重んじられ、大金を積めば好き勝手できる、ということはなかったのです。
商売だけでなく、経営の世襲も婚姻も、仲間の承認が必要でした。


この本を読んでいて、友達のこんな言葉を思い出しました。
「ウチの先祖は、熊本藩の細川家にお金をたくさん貸していたのに、全然返してくれなかった。子孫に代々語り継がれている」
んだと(笑)。

以前、上野の美術館で、細川家に伝わる美術品の展覧会がありましたが、あの素晴らしいコレクションは、友人のご先祖様である商人達の犠牲の元にあるのだとしたら、感心してばかりもいられないかも(^^;
Tracked from 本読みの記録 at 2012-08-20 19:53
タイトル : 江戸時代の経済活動を垣間見る:江戸のお金の物語
江戸のお金の物語 (日経プレミアシリーズ)作者: 鈴木 浩三出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社発売日: 2011/03/09メディア: 新書 江戸時代をお金という切り口から整理し、 通貨制度、経済政策、商人のビジネスなどを一冊にまとめたのが本書。 江戸時代のお金にまつわるエピソードがいっぱいで、知らない人が見れば、非常に興味深く読むことができるだろう。 ... more
by june_h | 2011-08-01 12:23 | 本 読書 書評 | Trackback(1) | Comments(0)