「日本は原子爆弾をつくれるのか」 山田克哉 著 PHP研究所

読んだ後、現実逃避して
「『バック・トゥー・ザ・フューチャー』のドクがテロリストから手に入れたプルトニウムは、原子炉級プルトニウムと兵器級プルトニウムのどっちだったんだろう?」
って考えてみました(^^;
「日本は原子爆弾をつくれるのか」 山田克哉「日本は原子爆弾をつくれるのか」 山田克哉
原発も原爆も、元の原理は核分裂。でも、原子炉の中でジワジワ起こる核分裂と、原爆の一瞬で起こる核分裂は、全然違います。
それを理解するには、核分裂のメカニズム、そして、ウランとプルトニウムのアイソトープ(同位体)について理解しなきゃならなくて。
この本では、これらのことが、図解でわかりやすく説明されています。
そして、量子力学とか方程式とかにあまり突っ込んでいないので、その方面が苦手な人でも大丈夫。物理のテスト30点だった私でも(笑)。
たぶん、これ以上、簡単に説明するのは難しいと思います。

原子炉はともかく、原爆を作るには、いくつか越えなければならないポイントがあります。

まず、ウラン濃縮技術と施設。
天然ウランだと、ジワジワしか核分裂しないので、一瞬で核分裂しやすいウラン235の割合を高めるための「濃縮」をします。
でも、濃縮には、高い技術と莫大な費用と設備が。一番原始的な遠心分離法だと、数千個の高速遠心分離機が必要なので、施設を建設して、エネルギーを確保するだけでも大変!
戦時中のアメリカは、ウラン濃縮のためだけに火力発電所を作ったそうな(^^;

そして、効率良く核分裂させるための爆縮レンズの開発、ミサイルの開発などなど。
原爆を作っただけでは、核抑止力を手に入れたことにはなりません。原爆を目的地に飛ばす「弾頭」が必要なのです。

とにかく、どれをとっても、高い技術と莫大な費用がかかります。

日本に多い軽水炉型の原子炉で、ウランが核分裂すると、最終的にプルトニウムなどができますが、ジワジワ核分裂するプルトニウム240が多いので、原爆には使えません。これを「原子炉級プルトニウム」と呼びます。
原爆に使う「兵器級プルトニウム」を作るには、黒鉛炉や高速増殖炉を使います。

原爆だけでなく、今は水爆もあります。
こちらは、「核分裂」のメカニズムで爆発する原爆に対し、「核融合」を利用します。でも、核融合のトリガーとして、やっぱり原爆が必要なんだそうです。

さて、本題の、日本は原爆を作れるかどうか?

原爆は、第二次世界大戦中に世界中で開発競争が繰り広げられました。
アメリカで進められていた「マンハッタン計画」では、ゼロから原爆を製作して、たった3年で広島と長崎に投下するまでになりました。
日本でも当時、原爆の理論は、わかっていたので、極秘に開発が進められていましたが、肝心のウラン鉱石が手に入らず、ウラン濃縮すらできずに終戦。戦後、GHQによって、施設と研究資料は没収されました。

今の日本が本気で開発するとすれば、まず、NPT(核拡散防止条約)から脱退して、IAEA(国際原子力機関)の査察を拒否した後、3年から5年で核実験までこぎつけられるだろうというのが著者の考え。

できたとしても、国際社会が反対するし、なにより、広島、長崎、福島をはじめとした日本国民が、決して許さないでしょう。

原爆を作る最大の動機は「恐怖」。
戦時中のアメリカは、ナチスドイツが原爆実験に成功する前に、なんとしてでも作りたかったので、恐るべきスピードで開発したのです。
そして、インドとパキスタンも、お互いの侵略の恐怖から、核抑止力を持つこととなりました。

問題は、原爆自体ではないのです。
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by june_h | 2011-10-31 20:36 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)