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「父・金正日と私」 五味洋治 著 文藝春秋

金正日の長男 金正男と、東京新聞記者の著者との往復書簡。
この本の印税は、正男氏は、もらえないのかな(^^;

北京の空港で、正男に偶然出会った五味さん。ダメ元で正男に名刺を渡すと、なんと彼からのメールが届きました。それから、二人のメールのやりとりが始まります。
他にも名刺を渡した記者がいたのですが、五味さんは、韓国語が得意だったことと、彼とのやりとりを忠実に記事にしたことから、信用されたようです。

金正男は、「放蕩息子」のイメージが強いですが、やりとりを見ている限りでは、率直な部分は率直に、デリケートな問題には、慎重に言葉を選んで答えています。
また、五味さんが彼とのやりとりを記事にすることで、本国にメッセージを暗に送っているような印象。
ダテに独裁者の息子じゃないです(^^;

彼が後継者を外されたのは、東京ディズニーランドに行って捕まったからではなく(笑)、開放政策を取りたい彼と、これまでのように情報統制したい父親と意見が合わなかったからのようで。

意外にも「世襲に反対」という点では二人とも意見が一致していたようですが、しっかり世襲されちゃってますね(^^;

金さんちは、北朝鮮で最高権力を持っているのは間違いないと思うのですが、彼らだけでは、どうにもならないこともあるんですよね、きっと。
今の将軍様も、周りを固めているご親戚衆の意見を聞かなきゃダメだろうし、大きすぎる軍を掌握するのが何より大変そう。

正男の孤独も、垣間見えます。
父親の寵愛が正恩の母親の高英姫に移ってから、彼の母親は、精神的に不安定になり、モスクワで亡くなったんだそうです。
食べるには困らないでしょうが、中国にいても北朝鮮にいても、政治的に利用される立場でしょうし、マスコミにも追い回されるから自由がないですし。

北朝鮮も金正男も、周囲の国の思惑でポッカリ取り残されている・・・・・そんな感じです。
by june_h | 2012-07-08 12:39 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)