「言葉を育てる 米原万里 対談集」 ちくま文庫

ロシア語通訳・翻訳家の故 米原万里さんの対談集です。

言葉を育てる―米原万里対談集 (ちくま文庫)

米原 万里 / 筑摩書房


読んでいて思ったのは、彼女は常に、国や組織を外側から見る立場にあり、冷静に分析してきたこと。

幼い頃、チェコに住んで、ロシア語を学び、日本語との違いを考えたり。
中国やソ連の共産党幹部の豪華な暮らしを目の当たりにして、「共産主義」「社会主義」を掲げながら日本より貧富の差があることに驚いたり。
中学で日本に戻り、教育法や試験問題の違いに疑問を持ったり。
ロシア語通訳として「東側」陣営の政治家と出会う機会も多かったことから、アメリカべったりの日本の外交や政治やメディアを情けなく思ったり・・・・・。

どんな国でも組織でも人でも、良い面悪い面があるということが、小さい時からわかっていたんですね。

だから、何にも耽溺することはなかった・・・・・父親を除いては。
読んでいて、薄々「この人ファザコンじゃないかな」って思っていたら、やっぱりドップリそうでした(^^;
なんとなく、山口美江さんと、同じ雰囲気を感じていましたから。

彼女の著書を読んでいると、政治の話も多いです。だから、読んでいて苦しくなることもあります。

辻元清美さんとの10年前の対談でも、今の原発問題につながるような話が出てきたりして、こんことも知らなかったんだって、自分が恥ずかしくなりました。

「シモネッタ」ことイタリア語通訳者の田丸公美子さんとの対談も。
田丸さんは、米原さんのことを、ロシアの女帝エカテリーナに引っ掛けて「エ勝手リーナ様」と呼んでいました(笑)。

この2人が通訳になった理由は、対照的。

田丸さんは、海外在住経験も留学経験もなかったけど、小さい時から通訳になりたくて努力を重ねて通訳に。
米原さんは、父親が共産党幹部だったため、企業に就職できず、「仕方なく」通訳に。
でも、彼女の性格上、組織に属さず、自分の腕一本で稼ぐ通訳は「天職」だったんですね。

あと、米原さんが考える
「日本人はなぜ論理的ではないのか」
の考察が面白いです。

日本や中国は、紙が豊富だったため、物事をたくさん記録できた。そのため、視覚情報が主で、羅列的・散文的な情報でも問題なかった。
対して、ヨーロッパは紙が貴重だったため、物事を記録できない。記憶する必要があった。
しかし、羅列情報を記憶するのは難しい。大量の情報を記憶するには、物語や論理が必要。そのため、聴覚情報が主で、論理が優先されるようになった・・・・・。
まさか、紙の量が国民性を決めてしまうとは(^^;

今の日本を米原さんが見たら、何を思うんでしょうか・・・・・。
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by june_h | 2012-09-06 12:29 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)