「生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由がある」 岡檀 著 講談社

自殺率の低い町 徳島県海部町の調査によって「自殺予防要因」を研究した著者による本です。

生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある

岡 檀 / 講談社


今までは、自殺多発地域での「なぜ自殺が起こるのか」を調査・研究したものが多かったそうですが、「なぜ自殺が起こらないか」を研究したものは、少なかったそうです。

日本の自殺率の低い自治体は、島がほとんど。
その中で、海部町だけが島ではなかったのです。
これに目を付けた著者は、海部町がどのようなコミュニティであるかを現地調査。
いろいろと興味深い特徴がありました。

自殺率に影響する地形的な特徴は
■自殺希少地域
「傾斜の弱い平坦な土地で、コミュニティが密集しており、気候の温暖な海沿いの地域」

■自殺多発地域
「険しい山間部の過疎状態にあるコミュニティで、年間を通して気温が低く、冬季には雪が積もる地域」

海部町は、前者に当たります。

以下は、海部町の精神的な特徴です。


■いろんな人がいてもよい、いろんな人がいたほうがよい
象徴的な出来事として、まず、「赤い羽根の共同募金が集まらない」
よくわからない団体にお金を出しても何に使われるか分からないし、募金しないからといって世間体を気にするというマインドも無い。
募金を強制することも、「野暮だ」と言って嫌うからです。
でも、知り合いが困っていたら、必ずお金を出します。

それから、「小学校で障害がある子のための特別支援学級を作ろうとしたら、反対が起きた」こと。
障害があるからといって排除するのはおかしいと。
いろんな人がいたほうがよいと思っているからなのです。

海部町は、江戸時代、材木の集積地として、外部から様々な移住者が流れこんできたので、閉鎖的なコミュニティができにくかったことが一因ではないかと考えられています。


■人物本位主義をつらぬく
日本の多くのコミュニティは、年功序列ですが、海部町は、実力があれば、若い人でも抜擢されます。
年長者が威張ることもありません。
そして、青年団のような組織に強制加入されることもないし出ていくのも自由。
いじめられることもありません。多様な意見が尊重されています。


■どうせ自分なんて、と考えない
アンケートで「自分には政府を動かす力はない」という質問で、「NO」と答えた人が、格段に低かったそうです。
社会に主体的に関わろうという意識が高いのです。


■「病」は市に出せ
海部町は、精神科受診率が高いのです。
精神科に通っているからといって白い目で見られることがありません。
問題は、早いうちに人に言って解決した方がよいと考えているからです。
逆に、自殺多発地域は、ギリギリまで人に相談できない雰囲気なのです。


■ゆるやかにつながる
海部町の人たちは、総じて人なつっこいですが、濃密なコミュニティはなく、人間関係は固定されていません。
人の噂をしていても、その場限り。
「関心と監視は違う」と言います。
でも、困った時は、ちゃんと助け合います。
逆に、自殺多発地域の方が、関わりは濃密なんだそうです。


そして一番の特徴は、
■こだわりを捨てる。「幸せ」でなくてもいい。
海部町には、幸せと感じる人も、不幸だと感じる人も最も少ないという結果が出ました。
むやみに幸せを求めず、不自由を受け入れ、今の自分を肯定すること。
「分相応」という意識を持つことです。


生きる上で、いろいろなヒントがある本です!
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by june_h | 2013-11-27 12:08 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)