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「一度も愛してくれなかった母へ、一度も愛せなかった男たちへ」 遠野なぎこ 著 ブックマン社

テレビのバラエティ番組で彼女は、自分の男性遍歴を面白おかしく語っていた。
他の出演者達は、男性をとっかえひっかえする彼女の行動に信じられないというリアクションをみせた。

私は、彼女の話を聞きながら思った。

「この人には大きなトラウマがある」

だって、この人、自分が傷つくこと平気でやってる。
全然、自分を大事にしてない。
彼女は笑って話しているが、悲鳴を上げているように感じた。

すると後日、この本が出ていた。

一度も愛してくれなかった母へ、一度も愛せなかった男たちへ

遠野 なぎこ/ブックマン社

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彼女の母親は、18歳で彼女を産んだが、ロクに子育てをしなかった。
弟妹ができた後、間もなく離婚。
男たちをとっかえひっかえする母親は、家を省みることはなかった。

彼女は、弟妹達を守るため、小さい時から家事と子育てをした。
生きることに必死だった。

母親は、長女である彼女に八つ当たり。ブスだと言い続ける。
それでも、彼女は、母親に愛して欲しかった。振り向いて欲しかった。

子役からずっと俳優業を続けてきたのも、家計を助けるためと、母親に褒めて欲しかったから。

母親の愛を求めても得られない悲しみ。
人の愛し方も愛され方もわからず、幸せから全速力で逃げる。
母親を大嫌いで大好きな気持ち。
精神は不安定になり、摂食障害、不眠、醜形恐怖、自殺未遂・・・・・。
彼女は、自分の姿を鏡で直視できない。

別のバラエティ番組で、霊能者の木村藤子さんが、彼女の母親との関係を霊視した。

「母親の苦しみを理解し、母親を許しなさい」

という言葉。

自分のことしか考えず、周囲の人間から愛やお金を吸い取ることに夢中な彼女の母親を、酷い母親だと皆、言うだろう。
でも、その母親も、決して幸せには見えない。

しかし、彼女は、到底受け入れられないと、激しく抵抗した。

母親を許さなければ、自分が苦しいだけ。
前に進めない。
説明されても、感情は、ついていかない。

彼女の中では、まだ終わっていない問題なのだ。

彼女は、バラエティ番組で生い立ちを告白したことで、同じような境遇にいる視聴者から励ましのメッセージをたくさん受け取った。
それで、ようやく、自分が悪くないと思えるようになった。
ようやく、自分の姿を鏡で見られるようになったという。

by june_h | 2013-12-21 12:09 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)