2013年 12月 29日
知られざる忠臣蔵『いろは仮名四十七訓 秀山十種の内 弥作の鎌腹』@国立劇場大劇場
面白かった・・・・・。
なんで上演されなかったんだろう!?って不思議に思うくらい。
■百姓弥作:中村吉右衛門
■千崎弥五郎:中村又五郎
■柴田七太夫:嵐橘三郎
■弥作女房おかよ:中村芝雀
この芝居を一言で表すと
「バカ正直で純粋なだけが取り柄の男が招いた悲劇」
ということになるのでしょうが、そんな簡単なものではないと思います。
とにかく、吉右衛門さん、弥作のキャラ似合い過ぎです(^^;
外見も、中身も。
見ていて、キャーカワイイ(。≧∇≦。)って、弥作の純朴さに打ち抜かれてしまいます(笑)。
でもね。
弥作を好きになればなるほど、ラストの切腹シーンが残酷で悲しく見えるんです・・・・・。
弥作は、ウソがつけないので、弟の弥五郎が吉良邸に討ち入りするのだと、代官の七太夫に、うっかり喋ってしまいます。
弟に堅く口止めされていたのにもかかわらず・・・・・。
討ち入りをお上に報告しに行くこうとする七太夫。
弥作は、七太夫を食い止めるために銃殺し、責任を取って切腹するのです。
しかし、弥作は、武士ではないので、切腹の作法がよくわからない。
武士として奉公している弥五郎から、一応、作法を教わっていましたが・・・・・。
白布を敷いて、四隅にシキミを立てるのですが、シキミがないので大根を並べたり。
脇差ではなく、鎌を使ったり・・・・・だから、タイトルが「鎌腹」なのです(^^;
このシーンは、忠臣蔵四段目の塩冶判官切腹シーンをよくご存知の方ほど、滑稽に見えるでしょう。
私、このシーンを見ながら、どんな顔をしていいのかわかりませんでした。
思い出していたのは、映画『風が吹くとき』でした。
核ミサイルによって汚染された地域に住む老夫婦。
放射能を防ぐために、政府に言われた通り、紙袋をかぶって過ごすのですが、そんなもので防げるわけもなく・・・・・。
その老夫婦と同じくらい、滑稽で悲しかった。
こんな純朴な人をこんな目に遭わせるなんて、この脚本家、なんて性格悪いんだろう、なんてドSなんだろうって、芝居を観終わった直後は思いました。
でも、しばらくして、ふと思いました。
純朴な人の危うさや狂気を表しているのかもしれない、と。
もし、弥作が人並みにズルくてウソの付き方を知っていたら、七太夫に秘密を漏らすこともなかったし、切腹することもなかったと思います。
弥作を責めるつもりはないですが、要するに、この世は悪い人が多いので、純粋な人は生きにくいということなのかなぁ・・・・・皮肉なことに。
吉右衛門さんだからこそ、この芝居の肝が、よくわかるのかもしれません。
吉右衛門さん以外に、弥作が似合う役者さんは思いつきませんね。
あと、芝雀さんもステキでした。
芝雀さんは丸顔なので、可愛らしい赤姫の役がよくお似合いですが、年増の役もイイですね(^^)