【映画:ネタバレあり】ドストエフスキーと愛に生きる

ドストエフスキーの小説の翻訳に一生を捧げたスヴェトラーナ・ガイヤーの生涯を追ったドキュメンタリー映画です。

84歳のスヴェトラーナは、ウクライナのキエフ出身で、現在はドイツ在住。
65年ぶりに故郷に向かう旅すがら、彼女の生い立ちが語られます。

スターリン政権下、彼女の父親は政治犯として逮捕されました。
やがて、その時の拷問が原因で亡くなります。

ナチスドイツ軍がウクライナに進攻してキエフを占領した時、ドイツ語を勉強していた彼女は、ナチス将校の通訳として働くことに。

数年後、劣勢となったナチスドイツは、キエフから撤退。
スヴェトラーナは、父親を殺したスターリンには従いたくないと、ドイツに渡り、それ以来、ドイツで暮らしています。

机の上に積み上げられた、辞書のように分厚い5冊の本。
これこそ、彼女が「五頭の象」と呼び、生涯を捧げたドストエフスキーの翻訳。

翻訳家として言葉に向き合ってきた彼女の言葉は、含蓄があります。

文章は、ただ、左上から始まって、右下で終わるのではありません。
翻訳する時は、鼻を高く上げなさい(全体を見なさいという意味?)。
そうしなければ、一つ一つの言葉の意味が分かりません。

ロシア語では、
「私はカップを持っている」
という表現は、文法的に成立しません。
「持つ」の現在進行形がないからです。
「カップは私のもの」
という表現ならできます。
物を所有した時から、物に支配され、物が主体になるからです。


キエフで懐かしい街並みを見ながらロシア語を使う彼女。
彼女は、結果的に祖国を裏切ったということになるのかもしれませんが、そう単純に断罪できるわけではありません。
ウクライナの複雑な歴史を、結果的に彼女が背負ってしまったのです。

ウクライナは、地理的に、東欧とロシアが絶えずせめぎあいを続けてきた場所。
大統領が亡命し、ロシアが軍事介入している今、まさにその渦中にあります。

ドイツとロシアに引き裂かれつつも、その両方の架け橋となったスヴェトラーナの人生。
今なら、非常にタイムリーであり、多く理解できるでしょう。
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by june_h | 2014-03-02 12:15 | 観劇 観戦 コンサート レポート | Trackback | Comments(0)