「はなとゆめ」 冲方丁 著 角川書店

・・・・・「はなとゆめ」と言っても、マンガ雑誌の方ではなく(^^;

『枕草子』をベースに、清少納言と、その周囲の人々を描いた小説。
作者は、『天地明察』でお馴染みの冲方丁さんです。

はなとゆめ (単行本)

冲方 丁 / 角川書店


まず、この小説、清少納言が一人称だったのでビックリ!
男性作家が、女性の登場人物の一人称で描く作品が、無いわけではないのですが・・・・・。

今までも、多くの女性作家達が、この時代を舞台にした作品を描いています。
清少納言は、感性豊かな女性ですから、同じく、感性豊かな女性作家達が、女性目線で描いている作品なら、たくさんあります。

こういう小説に比べて、この作品は、淡々としていて、まるで『枕草子』の注釈書のようです(^^;
読みながら

「清少納言が優等生な女子アナみたいでつまらん。
定子中宮との出会いのシーンは、もっと劇的に描いてもイイし、女房同士のイザコザを膨らませてもイイ。
瀬戸内寂聴なら、ラブシーンいっぱい描いて面白おかしくするだろうに。
まあ、彼女なら、清少納言じゃなくて、男性関係が奔放だった和泉式部を主人公にするよねー(←って思ってたら、実際書いてた(笑))。
『天地明察』の渋川春海みたいに、生涯をかけて粛々と大事業を為し遂げた主人公なら、この書き方でも良いと思うけど、主人公が清少納言じゃ、向かないんじゃね!?」


・・・・・とか、ブツブツ言いながら、途中で読むのを止めてしまおうと思ったのです。

でも、定子中宮が、一族を守るために剃髪し、出家を決意したところから、急激に印象が変わりました。

中宮と清少納言を軸に、女性の聡明さと品格を描こうとしているのだと。

中宮は、清少納言に言いました。

「一番大切だと思える相手から、一番に愛されよう」

中宮にとって、その相手は、夫の一条帝であり、清少納言にとっては、中宮でした。
この意味で、二人は「同志」だったわけです。

二人を取り巻く男性達は、己の能力を己の権力や名誉のために使いました。
しかし、この二人は、自分達の力を、「一番大切だと思える人」のために使いました。
だからこそ、中宮は一条帝に寵愛され、清少納言は中宮を慰めるために『枕草子』を書きました。

清少納言にとって、最大の理解者は、残念ながら夫ではなかったのです(^^;
夫は、清少納言の聡明さを、自分の箔を付けるために使いこそすれ、自分を超える才能を煙たがったのですから。

『枕草子』は、良き理解者である中宮に対する尊敬の念と、紙に向かう時に最も自由になれる清少納言の喜びとが結実したものだったのです。

政敵の藤原道長が、中宮を貶めようとしても、中宮と清少納言の仲を引き裂こうとしても、一条帝と中宮と清少納言の信頼関係は、決して揺らぐことはありませんでした。

結果的に、歴史上の「勝者」は、藤原道長でした。
でも、果たして本当にそうだったのでしょうか。

この本を読んで想像しました。
紫式部の書いた『源氏物語』の桐壺更衣は、定子中宮だったのかもしれない、と。

帝の愛情を一身に受けながらも、身分が低いために周囲から冷遇された桐壺更衣と。
正妻として一条帝に愛されていたにもかかわらず、後ろ楯の父と兄を失い、不遇な立場に追い込まれることとなった定子中宮と。
イメージが重なる部分があります。

定子中宮の聡明さと存在感が、千年以上続いた『枕草子』と『源氏物語』を生み出す元となったのであれば・・・・・真の勝者は明らかです。

最後まで読んで良かったと思える作品でした。

・・・・・でも、ちょっと女性をキレイに描き過ぎですね(^^;
女性は、もっと汚ないですよ。
キレイに見えるのは、深謀遠慮あってこそなんですけど(笑)。
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by june_h | 2014-10-12 12:45 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)