【映画:ネタバレ御免】パフューム-ある人殺しの物語-

どうしよう、感動しちゃった・・・・・とうろたえてしまうほど、大きなエネルギーを感じた映画。

視覚と聴覚でしか訴えられない映画というメディアで、「匂い」という嗅覚をどうやって表現するのか・・・・・という興味から映画館に足を運びました。
観る前は、
ハラワタたっぷりとか一面のお花畑とか、とにかく物量勝負で観る人の嗅覚を無理矢理こじ開けるのかなあと思ったり、
やっぱり「匂い」がテーマだから、官能的で甘美で、愛憎ドロドロエログロの映画かなあ、と思ったり、
いろいろ下世話な想像をしていましたが、良い意味でどちらもバッサリ裏切られました。

まず一つは、匂いを表現するのに、音と光を効果的に使っていること。
特に、殺害された女性の部屋のドアを父親が開けた瞬間や、クライマックスの公開処刑場シーンでの表現が印象的。
そしてもう一つは、グルヌイユの感情表現を徹底的に排除していること。そのため、彼の持っている「魂を揺り動かす香りを作りたい。そしてそれを永遠に留めたい」という想いがことさら強調されます。

彼は、生まれてすぐ母親を殺され、孤児院や皮なめし場といった、パリの最底辺の世界で生きながら、誰とも人間的な心の交流を持つことができずに成長します。そのため、善悪といった世俗の価値観や、喜怒哀楽といった人間の機微は通用しません。匂いでしか、この世とつながることができなかった男です。

映画の中盤で、驚異的な嗅覚とは別に、彼の身体が持つ、もう一つの「宿命」が明かされます。実はこっちの方が重要です。この「宿命」こそが、彼の存在不安の源で、それをなんとか解消するために、「自分の生きた証として香りをこの世に永遠に留めねばならない」という狂気に自分を駆り立てるのです。逆に、元々持っていた存在不安がこの「宿命」の形で表れたのかもしれません。
実際に考えたら絶対ありえないんですが、この二つの宿命が、彼の殺人の動機と後々の展開に大きな説得力を持つのです。

彼は目的を果たすため、処女を次々と殺害して「エッセンス」を搾り取ります。冷静に考えたら、すごくグロくて残忍なことをしているんですが、映画を観ているときは、全然そんなふうに思いませんでした。それどころか、彼の一つ一つの行為が崇高な儀式に思えてくるので不思議です。気づいたら私もグルヌイユ目線になって、一緒になってワクワクしてるんです。コワい映画です。自分がコワいです。

殺人犯として捕まったグルヌイユは、自分の作り上げた究極の「パフューム」を纏って、公開処刑場の処刑台に降り立ちます。「彼を殺せ!」と騒いでいた群衆は、その香りを嗅いだ途端、彼を神のように崇めたて、公開処刑場がエデンの園にガラリと変化します。彼が纏っていたのは青い服、そして処女の香り。なるほど、聖母(処女)マリアの降臨の象徴ですね、とニヤリ。
『オペラ座の怪人』の怪人エリックが「美」に殉じたのだとすれば、『パフューム』のグルヌイユはまさに「匂い」に殉じた男なのです。

この監督さんの力量はスゴいですね。だって、ちょっと間違えば、グルヌイユがひたすらキモいホラー映画になったり、「原料」として見ていた生娘に恋をして悔い改めるなんていう安っぽい恋愛映画になったりする危険性が高い話なので。そういう落とし穴をくぐりぬけて、実際に考えたらアリエナイことだらけなんだけど、最後まで観終わると、純粋すぎる一人の男の人生の物語として、受け入れてしまっている自分がいます。
でも、ネットの感想を読むと「ただの変態映画じゃん!」っていう意見が多いですね。・・・・・ってことは、私も変態?

P.S.
チケット○○でこの映画の前売券を購入したとき。
「パフューム、ある人殺しの物語、でよろしいですね」と、大声で3回も確認されました。なぜそこを強調するんだ。ハズカシイ(^^;
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by june_h | 2007-03-04 13:50 | 映画 感想 | Trackback | Comments(0)