『吉本興業、カネの成る木の作り方』 大下英治 著 講談社

「この子らに世に出してもらって、この子らに潰されるんや。おれらのブームは、そう長くはつづかへん」

自分を一目見ようと熱狂するお客さん達を前にして、ふと中田カウスの頭に浮かんできた詞。
当時は漫才ブームのまっただ中。うめだ花月のホールで渦巻く喧騒の中、カウスは醒めていました。
自分を応援してくれるお客さん達は、ありがたい存在であると同時に、とても残酷な存在でもある。ブームが去ると、手のひらを返したように、去って行ってしまう。人の心は移ろいやすいもの。

吉本興業、カネの成る木の作り方 エディトリアル

大下 英治 / 講談社


小さな寄席小屋からスタートした吉本興業が、舞台やテレビなど、様々なメディアを通じて、いかにして日本の笑いの文化を支えるまで大きくなっていったのか。エンタツアチャコ、笑福亭仁鶴、桂三枝、横山きよしなどのエピソードも交えながら紐解いていきます。

古くは、木戸銭をディスカウントした薄利多売商法、年功序列にこだわらない実力主義、最近では内弟子制度にとらわれない吉本総合芸能学院(NSC)による人材確保。特に人材育成システムに関してはまるで、欧米のバレエの国立機関のよう。お笑いタレントを養成する機関としては、世界広しといえどもこの吉本だけでしょうね。

それにしても、成功している芸能プロダクションは、奥さんがしっかり者のケースが多いですね。吉本興業の吉本せい、渡辺プロの渡邊美佐。最近では、タイタンの太田光代、OFFICE CUEの鈴井亜由美。

この本の惜しい点は、会社案内みたいな内容に留まっている点。もう少しドロ臭い話も聞きたかったな、というのが正直なところ。

吉本興業所属のタレントは、バラエティ番組には欠かせない存在ですが、今でも花月やルミネTHEよしもと、吉本∞ホールなど、劇場ライヴでの育成を重要視しているそうです。ライヴはお客さんの反応が直に分かりますし、アドリブも鍛えられますからね。
今度、神保町花月もできることだし、吉本のライヴに行って見ようかと思います。

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Commented by rudolf2006 at 2007-04-21 05:54 x
june_hさま お早うございます。

吉本は、私の子供の頃は、もっと大らかな感じがしました。
松竹の方が、昔は力が強かったんですよね。
それで、吉本はテレビ業界に入り込んで、今の地位を築いたんだと思います。
ですが、私は昔の吉本の方が懐かしいですね、もっと大らかで、セコイ感じがしなかったような気がします。
今は、松竹の方が芸人が大らかな感じがしますね~
世の中の移り変わりでしょうか

ミ(`w´彡)
Commented by june_h at 2007-04-21 17:22
rudolf2006さま、毎度コメントありがとうございます!
この本にも当然、松竹の話が出てきました。最近までは、松竹の方が規模が全然大きくて、吉本はずっと「打倒松竹!」みたいな気持ちでやってきたみたいですね。私の中では、吉本に比べると、松竹の方が保守的なイメージです。でも、決してネガティブなイメージではないです。松竹のことをいろいろ調べてみると、役者はもちろん、舞台を支える裏方のスタッフさんとか、衣装や鬘の伝統工芸職人さんとかを、守ってきたことがわかりましたから。最近は、歌舞伎がまた注目され始めているので、松竹さんもいろいろがんばってほしいです。
私も大阪にいた頃は、吉本新喜劇や花王名人劇場を良く見てました。父親が好きでしたので。意味はよくわからなかったけど、よく笑ったのを覚えています。
rudolf2006さんのおっしゃるとおり、世の中の風潮で、笑いがドラスティックになってるかもしれませんね。rudolf2006さんの書き込みを読んで、ちょっといろいろ考えさせられました。
by june_h | 2007-04-19 20:23 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(2)