人気ブログランキング | 話題のタグを見る

【ネタバレ御免】コクーン歌舞伎 『三人吉三』 @渋谷Bunkamuraシアターコクーン

人間は、弱く、寂しく、罪深い。

双子の兄妹、おとせと十三。
義兄弟の三人吉三。
巡り巡って五人の因果が、重なり、絡まり、もつれ合う。

パチンと切れて、虚ろになって、人は初めて悟るのだ。
なんだ。
この糸は、自分の体から出ているじゃないか。
こんなに苦しいのは、全部自分のせいだったんだ。ずっと、一人相撲だったんだ・・・・・。

江戸末期の売れっ子脚本家、河竹黙阿弥、
現代の売れっ子演出家、串田和美、
そして永遠のエンターテイナー、十八代目中村勘三郎が繰り広げる、どろどろメロドラマ。
(すいません。感動して文章がオーバーになっちゃいました(^^;)

・和尚吉三:中村勘三郎
・お嬢吉三:中村福助
・お坊吉三:中村橋之助
・十三郎:中村勘太郎
・おとせ:中村七之助


オープニングで、ある「何か」が舞台をスーッと横切る。「何か」とは、この芝居を象徴する重要なものなのだけど、これだけで客は大盛り上がり。掴みはオッケー!私の後ろの男性も「これだけでチケットの元が取れた」と大喜び。

生まれてすぐに引き離されたおとせと十三は、19年後に巡り会う。兄妹とは知らずに愛し合い、畜生道(近親相姦)に堕ちていく・・・・・っていうか、実際演じてる二人は、本当の兄弟なんだけどさ。
和尚吉三、お坊吉三、お嬢吉三の盗っ人三人は、お互いの血を飲んで、義兄弟の縁を交わす・・・・・っていうか、演じてる三人は、本当の義理の兄弟なんだけどね。

数年前、歌舞伎座で従来の三人吉三を見たことがあります。市川団十郎の和尚吉三、片岡仁左衛門のお坊吉三、坂東玉三郎のお嬢吉三という豪華な配役でした。その時の演出と比べながら楽しみました。

お坊吉三の衣装は、どうして浅葱色じゃなくて青いんだろう?・・・・・ああそうか。和尚の黒、お嬢の赤と対比させたかったのね。
立ち回りのテンポが、普通の歌舞伎より早くって激しいわ。役者は大変そうだけどカッコいい!

そしてなんといっても、特筆すべきは、大詰めの演出でしょう。
私は今回、ラストの立ち回りで「ハシゴ」をどう使うか、楽しみにしてました。従来の三人吉三でもおおっ!と思うような使い方をしていましたから。
ハシゴの演出は、串田和美の勝ちです(なんか上から目線ですね。スイマセン)。クロスさせて磔刑のようにすることで、より強く「罪人」であることを意識させられましたから。

そして、追っ手を振り払うために刀を振り回していた三人が、いつのまにかそれぞれ一人になって、自分に絡まる糸を振りほどくように刀を振り回す演出。
自分が招いた因果にもがいているようで、震えがきました。

もちろん、観客総立ち。私も、トリハダ立ち。スゴいモノを見せてもらいました!
コクーン歌舞伎、初参戦でしたが、今後ともご贔屓にさせてもらいます!

PS
前の方の席の人達は、ものすごい量の紙吹雪かぶってましたね。帰りの女子トイレの洗面台が真っ白でした(笑)。

<関連リンク>
シアターコクーン 6月公演 渋谷・コクーン歌舞伎 第8弾(歌舞伎美人)
渋谷・コクーン歌舞伎 第八弾 三人吉三(Bunkamura)
「三人吉三廓初買」(三人吉三)(グーテンベルク21)
河竹黙阿弥(ウィキペディア)
串田和美(ウィキペディア)
中村屋(公認ホームページ)
by june_h | 2007-06-17 08:43 | 歌舞伎 鑑賞 | Trackback | Comments(0)