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舞台 『鹿鳴館』三島由紀夫 脚本 浅利慶太 演出@NHK教育

「美しい風景は、寂しい方たちのためにあるのではないかしら」
「血を流すのと、女を抱くのは、暗がりの方がよろしゅうございます」

ゾクッとするセリフが魅力的な、三島由紀夫の戯曲。浅利慶太演出による、劇団四季の舞台ですが、柔らかさや品の良さとはかけ離れた、硬くて棒読みチックにセリフを「読む」役者達に、思わずコケそうになりました。
でもまあ後になって、客にセリフがちゃんと伝わるように、ワザと、くっきりはっきりゆっくり喋ってるってのが、わかったんですけどね。
普段言い慣れない単語や言い回しのオンパレードだし、独特のレトリックがふんだんに盛り込まれているから、しょうがないかな。

三島由紀夫の戯曲に出てくる男性は饒舌。おしゃべりとはちょっと違って、自分の内面をベラベラ解説するのね。普通の男は、あんまり内面を吐露しないものだし、そもそも自分の言動や感情をうまく言語化できない人がほとんどだから、違和感バリバリ。
三島由紀夫と親交が深かった美輪明宏がよく「男はプライドと劣等感でできている」と言うけど、それが良く分かる戯曲ですね。その反対に、女達の図太さもよく描かれています。

舞台は文明開化の風情溢れる、明治時代の鹿鳴館。伯爵婦人、朝子は、自分が主催する今夜の夜会で、とんでもない陰謀が計画されていることを知る。
生き別れた息子の久雄が、彼の実の父である政治家、清原を暗殺しようとしていたのだった。
息子と、かつて愛した男性を救うため、陰謀を止めようと奔走する朝子。しかし、彼女の努力も虚しく、朝子の現在の夫、影山伯爵による策略で、久雄のピストルの引き金は引かれ、華やかな夜会で、銃弾の音が響いたのだった。

「こんなふうにドレスを着て西洋人の猿真似をしたところで、西洋人の腹の中で、我々は軽蔑されるだけです。自尊心を持った人間こそが、真に尊敬されるのです」

当時の上流階級の欺瞞を描いた作品と言いますが、この戯曲が成立したのは1956年。一夜にして価値観が変わった敗戦から10年余。太平洋戦争で敗けてからすっかりアメリカの傀儡となり下がった日本を、欧米列強に追い付くため極端な西洋化路線に走った明治政府に、なぞらえているのではないのでしょうか。

(セリフについては、ウロ覚えなので、そのものズバリではございませんことをご了承くださいませ)

<関連リンク>
『鹿鳴館』(劇団四季ステージガイド)
Commented by rudolf2006 at 2007-06-27 09:00 x
june_hさま お早うございます

『鹿鳴館』というと、文学座の公演を思い出しますね、といっても、舞台は私は観たことがありません。文学座と三島が決別して、三島の戯曲を文学座が上演することを禁止してしまったですよね。
杉村春子さんは、この『鹿鳴館』の影山伯爵夫人の役を持ち役にしていて、もう一度やりたいと思っておられたそうですよ。あれは、歌舞伎の役者や杉村さんのような役者でないと、無理ではないかなって思います~。

ミ(`w´彡)
Commented by june_h at 2007-06-27 20:21
rudolf2006さま、いつもありがとうございます!
おっしゃるとおり、影山伯爵夫人の役は、今の女優さんで演じきれる方はなかなかいらっしゃらないと思います。美輪明宏で観たいな~と、思ってしまいました。三島作品だと、美輪さんは、近代能楽集の『葵上』の六条康子とか、『卒塔婆小町』の老婆とか、『黒蜥蜴』の緑川夫人とか演じてらしたんですけどねー。
by june_h | 2007-06-26 20:47 | テレビ ドラマ ドキュメンタリー | Trackback | Comments(2)