『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』 河合隼雄・村上春樹 岩波書店

この本の存在はずっと知っていましたが、今まで敢えて読むことを避けてきました。なぜなら、私は村上春樹の作品をほとんど読んだことがなかったからです。
最近、河合隼雄さんが亡くなって、久しぶりに彼の著書を読もうと図書館に行ったとき、たまたまこの本だけがありました。
ここで出会ったのも何かの縁、読んでみることにしました。
「ぼくは何をしているかというと、偶然待ちの商売をしているのです。みんな偶然を待つ力がないから、何か必然的な方法で治そうとして、全部失敗するのです。ぼくは治そうとなんかせずに、ただずっと偶然を待っているんです」

今になって、今だからこそ、河合隼雄さんのこの言葉の意味が良くわかります。
まず、本物の療法家は「オレの技術はスゴいんだ」「オレが治してやったんだ」なんて言わないこと。「患者自身の力で治るものだ」と言います。このへんの違いが、信用できる療法家を選ぶポイントかもしれません。

「患者自身の力で」なんて、無責任にも聞こえますが、その人の体は、その人自身が知っているものだし、いくら周りが頑張ったって、本人が治ろうと思わなければ治らないわけで。療法家は、患者が治る手助けしかできないのです。

んで、さらに、河合隼雄さんは、一歩進んで(?)「治る偶然を待っている」なんて言う。
ここまで言えるのは、ある意味スゴい。だって、療法家なのに「治そうとしない」なんて言ってるんですから。

私は数年間、心身の不調に悩まされ、あちこちの医者や、いろんな治療を試しても全然うまくいかず、「私って一生このままなのかしら」って絶望した時期もあったけど、ある偶然をきっかけに、ウソみたいにペロッと治ってしまった。「なんでやねん!」って突っ込みたくなるほどに。

「我慢する」でもなく「何もしない」でもなく、ただひたすら「待つ」ということの大切さ。
そういえば、世の中便利になり過ぎて、「待つ」っていう行為をあまりしなくなったし、ナイガシロにしてたなあ、なんて、振り返って思います。
療法家がすべきことは、治る時期が来る日まで、患者さんが「上手に」待つ手助けをすることなのかな、なんて思いました。

この本が出たのは、1996年。二人の関心と話題の多くは、阪神大震災とオウム真理教に向けられていました。そういえば、村上春樹の作品の中で、私が唯一読んだことがあるのは、オウム信者とのインタビューを軸にした『約束された場所で』でしたっけ。
私がこの本を読んで、当時、感じたのは、すごく乱暴だけど「オウム信者になるかどうかは、その人が信じる「何か」が、オウムの中にあったのか、それ以外にあったのか、ただそれだけの違い」ってことでした。今読んだら、どう思うかはわからないけど。

二人の対談から、10年以上経った今。
今、二人が対談したとしたら、どんなことを話題にするのだろう。
そんなことを思いました。



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Commented by monsieur-meuniere at 2007-08-10 22:39
こんばんは。暑い日が続いておりますが、お変わりありませんか?
村上春樹、河合隼雄に会いに行く、読まれたんですね!僕の場合は、この本で初めての河合隼雄さんの存在を知りました。河合さんの待つという姿勢のラディカルさ、待つことによって物語が動き出す不思議、そんな何かに魅了されました。
投稿読ませていただいて、僕自身、この10年、何が変わって、何が残ったのか、そんなことを考えてみるのも良いと思いました。また遊びにきます~。
Commented by june_h at 2007-08-11 09:18
monsieur-meuniereさん、コメントありがとうございます!
monsieur-meuniereさんは、村上春樹がお好きなんですよね。私は読んだことがほとんどないので、この本で語られている『ねじまき鳥クロニクル』の話とか、全然わからなくて、やっぱり読まなきゃダメね~、などと思ってしまいました。でも私は文学が苦手(^^;;;
村上春樹といえば『アフターダーク』で、私の好きなスガシカオについて語っていたとき、自分のことのようにうれしかった!自分の興味の対象が、もともと自分が好きなモノとリンクすることに、不思議な感動を覚えます。
また遊びに来てくださいね♪私もちょくちょくお邪魔します。
by june_h | 2007-08-08 21:07 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(2)