『ムチャを言う人-不屈のクレーム対応奮戦記-』 川田茂雄 著 中央公論新社

ボロボロの中古カメラを片手に「不良品だから300万円で買い取れ」と脅す男。仕事で写真がうまく撮れなかったからといって200万の損害を補償しろとすごむヤクザ。

著者は長年、大手カメラメーカーのサービスカスタマーセンターで所長を務めていた方。
この本に登場するクレーマー達は、彼の長年の所長人生の中で、特に印象深かった人達。手ごわい相手ばかりです。

私も仕事で、社内システムのチェックとサポートを担当しているので、仕事の参考に、最近こうした本を読んでいます。でもまあ、基本的に社内の問い合わせ対応なので、この本に出てくるような、エキセントリックな要求をされたことは、幸い無いのですが。せいぜい「オレのせいじゃない!」って言い訳を長々聞かされて、ため息をつくぐらいです。
だからといって、この本の事例が役に立たないかというと、そんなことは全然ありません。
  • 電話の録音やビデオの録画などで、やりとりの記録を残す。

  • 窓口を一本化する。人によって対応がバラバラだと、矛盾点につけこまれる。

  • 相手の家や事務所に出向くときは、二人以上で行く。

  • 客を決してバカにしてはいけない。新たなクレームを生む土壌になってしまう。社内で客を足蹴にする「クレームメーカー」社員を育てないようにする。

  • マニュアルどおりに対応すれば必ず解決するわけではない。一人一人にその都度適した解決方法を見つける。

などなど、当たり前だけど、結構重要で忘れがちなエッセンスを読み取ることができます。
サポートセンターの問い合わせの内容は、お客さんが、製品について良く知らなかったり、勘違いしていたりする場合が多いのですが、当然、サービスを提供する側の落ち度である場合もたくさんあります。

私も実際、いろいろな問い合わせを受けていて、明らかにこちらのシステム仕様やマニュアルが悪いことで問い合わせが増えていることがわかった場合は、システム製造元や取り纏め部署に対して、改善提案をします。
もちろん、私のミスで発生してしまったトラブルについては、先方にお詫びして、一生懸命フォローして、こちらの対応手順を見直します(^。^;;;
そんなわけで、クレーム対応はタイヘンですが、とても勉強になります。

この著者の対応には、本当に頭が下がります。「こちらが一生懸命相手をしているとわかると、大抵のクレーマーは静まるものだ」ということで、クレーマーの世間話を延々聞いたり、何十キロも歩いてクレーマーの家に出向いたり。会社を辞めた後も、プライベートでお付き合いが続いているクレーマーもいるそうです。実際、家庭で居場所がない亭主とか、頭は良いけど話相手が居ないマニアとか、クレーマーには寂しがり屋さんが多いのね。

この本の最後に、著者が「真のクレーマー」と呼ぶ、スゴい人物が登場します。この人は、あるトラブルをきっかけに、ある大手メーカーに対してサービスの改善を要求し続け、そのメーカーの製造物責任に対する社内意識を根本から変えた人です。
最終的に、そのメーカーは、新聞にお詫び広告を記載し、消費者から余分にもらった利益を社会に還元するため、慈善団体に毎年一定額を寄付し続けるという約束をしました。
ここまでくるのに、最初のトラブルから八ヶ月。
彼は、会社の顧問弁護士でも、コンサルタントでもありません。彼の要求が受け入れられたのは、シュプレヒコールをし続けたわけでも、ゴネまくったわけでもありません。問題が発生した原因をしっかり分析し、問題解決のための的確な提案をしたことにあります。そして、彼の提案を受け入れたメーカー側もスゴい。一消費者の意見を社内全体に反映させるなんて、なかなかできないことです。彼が、自分のことしか考えていないクレーマーではなく、社会の利益のために戦っていた人であることの証拠です。

こうして書いている私は、今日も仕事で、メールの宛先を間違えてしまいました・・・・・反省_П○

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Commented by monsieur-meuniere at 2007-11-17 00:57
「プライベートでもお付き合いをしている」って…ふ、深いですね…。
昔、アカデミー賞を受賞した映画に「クレイマー、クレイマー」ってのがありましたが、(英語の綴りは違いますが)この人を主人公にした映画「クレーマーはつらいよ」みたいなのも作っても良いかもしれません(笑)ちょっと見たいかもしれない。
僕も昔、テレビ局で働いていた時代に、新人研修で受信料を取りに行くという仕事をやらされたことがあったんですが、担当した家が、めちゃめちゃヤンキーみたいな人の家で、なぜか1時間くらいネチネチ言われたことがあったんですよ。最後の方は、僕も、なんかバカらしくなってきて、あまりのバカらしさに、何故かちょっと笑っちゃって、それでさらに火に油を注いでしまったみたいで、さらにネチネチ因縁をつけられた記憶があります。あれは、なんだったんだろう?あの日の光景は、ダリの絵みたいな感じで僕の脳に残像を残しています。シュールだったです。
それにしても、お仕事いつもお疲れ様です。あんまりストレスためずに、リフレッシュも忘れないでくださいね!また遊びにきます。
Commented by june_h at 2007-11-17 12:01
>monsieur-meuniereさん
こんにちわ!大変なお仕事をなさってたんですね・・・・・。受信料の集金の大変さは、伝説になってますからねー。私も、高校の現社の先生に、受信料の集金がいかに大変かということを、延々説明されたことがあります。確かに、延々と苦情だの難癖だのを聞かされると、始めはこっちもカーッとなったり、逆に落ち込んだりするんですが、だんだん冷めてきて、今、私、何やってんだろ?って、ふっと思ったりするんですよね。
私の仕事はそれほど大変な人から電話が掛かるわけじゃないので、そんなにストレスはたまらないですよ。お気遣いありがとうございます。それに今は、お金に糸目をつけずに、歌舞伎に落語に演劇に遊びまわってますからねー・・・・・お金貯めなきゃ(^^;
by june_h | 2007-11-15 21:11 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(2)