『チョコレートの真実』 キャロル・オフ 著 英治出版

バレンタインデーチョコ。コンビニで買うおやつのチョコ。これらのチョコに、アフリカのカカオ農園で働く子供達のコストは、どれくらい含まれているのだろうか?
答えは、限りなくゼロに近い。
しかし、私達はこれを喜ぶべきだろうか。
なぜって、子供達はタダ働きなのだ。下手したら死ぬまで、奴隷同然に。チョコレートに含まれるのは、彼らのコストではなく、血肉なのだ。

チョコレートの真実 [DIPシリーズ]

キャロル・オフ / 英治出版


本屋でこの本を見かけたとき、
「ボクはカカオを作っているけど、チョコリット、食べたことがありません」
という言葉を思い出した。中学の地理の資料に出てきた、ガーナのカカオ農園で働く男の子の言葉だ。
カカオ生産に携わる人は、チョコレートを食べたことはない。しかし、この本に書かれていたことは、もっとひどかった。彼らは、チョコレート自体を知らず、自分達が作るカカオが、何に使われるのかも知らないのだ。

人間がカカオの美味しさを知ったときから、金銀宝石と同じように、カカオは常に人間の欲望の対象だった。カカオの歴史は、富める者と貧しき者の歴史を浮かび上がらせる。

原産地のアステカでは、カカオ豆は富の象徴であり、通貨として使われた。カカオから作られる飲み物は、アステカ帝国の支配階層だけが口にできた。
アステカ帝国がスペインに征服されてからは、カカオはチョコレート(液体)に加工され、ヨーロッパ中の貴族に広まる。重要な特産品となったカカオを増産するために、豆はアフリカ大陸の植民地に持ち込まれ、過酷な境遇の奴隷達によって作られるようになった。

現在はどうか?
一部の金持ちしか口にできなかったチョコレートは、子供達のオヤツの定番として、世界中に広がった。
奴隷制も禁止され、生産者の待遇も良くなったように見える。しかし、実態は、植民地時代から変わらない、あるいは、もっとひどい現実が巧妙に隠されている。

カカオを作っても、収益の大半は、汚職や略奪が横行する警察や軍人への賄賂消え、港に運ばれた豆は、欧米の多国籍企業によって安く買い叩かれる。カカオを作れば作るほど、苦しくなっていく農園経営者は、周辺国から流れこんできた難民達を、「年季契約」という名目で、賃金も支払わず働かせる。カカオの富を「搾取」ではなく「収奪」する現地政府も、欧米各国も、欧米のチョコレート企業も見て見ぬふり。旧宗主国が旧植民地に債務を押し付け、旧植民地の経済
が旧宗主国に大きく依存する実態は数百年前から変わっていない。
加えて、カカオの利権をめぐる内戦。それを後押しする武器商人。実態を暴こうとするジャーナリストは、闇に葬り去られていく。NPOが欧米政府に訴えても、ロビイストに揉み消される。
アフリカの飢餓と貧困のメカニズムは、天災ではなく、人災だ。

コートジボアール、マリ、ガーナでの丹念な取材で見えてくるのは、カカオをめぐって繰り返される欲望と悲劇の連鎖。著者の深い絶望の言葉で、このルポルタージュは終わっている。

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Commented by june_h at 2008-03-29 21:23
>aoyamaさま
コメントありがとうございます!
とても読み応えがあり、いろいろ考えさせられたルポタージュでした。綿密な文章からは、女性の身で、危険をかえりみず、精力的な取材を行ったことが伺われます。
ブログ再開、お待ちしております!綿密なルポを楽しみにしています!
Commented by はぴりん☆ at 2008-04-17 01:29 x
june_hさま
こんばんは。激遅のコメントすみません。
本のご紹介ありがとうございます。
読書、映画が好きです。
最近これといった本に出逢えないのですが
早速、読んでみたいと思います。
リンクよろしいですか。
今後ともよろしくお願いいたします。
Commented by june_h at 2008-04-17 21:02
はぴりんさん初めまして!コメントありがとうございます。私も読書、映画が好きですので、どんどん紹介していこうと思っています。リンクも大歓迎です!こちらこそよろしくお願いします。
by june_h | 2008-03-26 21:05 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(3)