『ファストフードが世界を食いつくす』 エリック・シュローサー 著 草思社

100円のハンバーガーを買って「安くてトクしちゃった」と思ったら大間違い!ワンコインと引き換えに、実は私達は多くのものを失っている。
食の安全、健康、雇用の安定、治安・・・・・「安かろう悪かろう」製品を購入することで、実は自分達の生活まで「安かろう悪かろう」ものになってしまうのだ。

ファストフード業界を通して見えてくるのは、アメリカ資本主義経済の功罪である。

ファストフードが世界を食いつくす

エリック シュローサー / 草思社


均一のサービスと味を安価で提供するファストフード店は、戦後アメリカ国内で急速に広がり、今や世界中を埋めつくしている。
そのため、世界中の街が、同じ景色になってしまった。

アメリカの主要ファストフードチェーンの創業者の一人に、このような街の景色を見てどう思うか尋ねたところ「大変満足している。なぜなら妻と知り合ったころ、この道路は砂利敷きだった。それが今、アスファルト舗装になっているんだよ」と答えたという。
これは自己弁護でも開き直りでもなく、彼には本当にそう見えるのだろう。
彼が若かった頃は、自分も街も貧しく、毎日の食事に事欠くこともあっただろう。彼にとってファストフードは「進歩」と「富」の象徴なのだ。

しかし、大きくなりすぎたファストフード産業は、世界中に大きな弊害を持たらすようになった。

安い賃金で長時間働く従業員たちは、スキルがあがらず給料も増えず、組合を作ろうとすれば解雇されてしまう。強盗や殺人など、マクドナルドで発生する犯罪のほとんどは、元従業員によるものだという。
また、専属の牧場や農家の生産物は、農奴のごとく安く買い叩かれるため、自営の牧場がどんどん姿を消しているという。
アメリカ国内の消費者も、数十年前と食生活が大きく変わり、今や世界でも指折りの肥満大国。学校でもハンバーガーとコカコーラが売られ、ファストフード業界に都合の悪い教科書の記述は削除される。

特に、食肉加工場の様子が書かれている7章、8章を読んだ晩は、あまりのエグい内容で、ものすごいリアルな悪夢を見てうなされてしまった。

牛達は、牛犬猫鳥の死骸で作った粉を食べさせられ(←生ゴミ処理機か!)、不法移民を安い賃金で長時間働かせている。従業員は、過酷な労働環境でケガや病気になりやすいのに、健康保険も補償もなく使い捨てられる。
牛の加工場で、従業員達が排尿するのは当たり前。肉が細菌で汚染されるリスクが極めて高いにもかかわらず、経営者が政治家に「献金(←賄賂だよね)」して、外部の検査担当者を立ち入らせないようにしている・・・・・。

ハンバーガーに挟まっているのは、肉ではなく、細菌と汚物なのだ(-_-;;;

最近また、輸入アメリカ産牛肉に危険部位が含まれていたとかで、問題のアメリカ企業の食肉加工場を日本のマスコミが取材しようとしたが、インタビューも撮影も拒否されていた。この本に書かれていることが真実なら、とても、あの窓の無い工場の内部なんて公表できないだろう。

問題は何か?

まず一つは「利益」至上主義だ。
創業者達が開いた店に、経営や宣伝のプロが続々と参加することにより、爆発的に大きくなった。そして、株式市場に上場することで、より多くの資金を集めることに成功したが、同時に、株主と経営者が現場を無視して数字上の利益ばかり追いかけるようになった。そのため、安く仕入れて高く売るのに、手段を選ばなくなった。

会社が大きくなるのは良いことと思われがちだが、株式公開もリスクなのだ。

それから、経営者たちは、従業員も消費者もバカにしているってことだ。お金儲けは決して悪いことではないが、優先順位の一番上にお金を置くと、エグい世界になってしまう。モラルとか、尊厳とか、環境とか、命とか、社会とか、人間関係とか、あまりにもナイガシロにされているので、読んでいて、怒りがどんどん湧いてくる。

私達の生活を脅かすのは、宇宙人でも未知のウイルスでもない。私達が100円玉をどう使うかで、世界は変わる。

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by june_h | 2008-04-29 13:54 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)