『仏果を得ず』 三浦しをん 著 双葉社

「生きることだ。生きて生きて生き抜けば、勘平がわかる」

『仮名手本忠臣蔵』の「早野勘平腹切の段」という大役を与えられたが、勘平の性根がわからないと嘆く健。そんな彼の白昼夢に志半ばで亡くなった兄弟子、文楽太夫の月大夫が現れて語る。

生き抜かなければ、文楽はわからない。
修業中の健にも、作者の三浦しをんも、もちろん私も、文楽はまだまだわからない。
だからこそ、文楽は面白い。

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主人公の笹本健大夫(通称「健」)は、文楽太夫になって間もない。まだまだ修業中の身。
奥さんをほったらかして若い女の子と遊ぶ、師匠の銀大夫。三味線の腕は天才的だが、変わり者でマイペースな兎一郎。文楽と健が大好きで、健に猛烈なアタックをかける小学生のミラちゃん。
周囲の個性的な人たちに振り回されながらも、友人が経営するラブホテルの一室に身を寄せながら、芸の研鑽と舞台に励む。

健が真面目過ぎるからか、作者の人物解釈がウザいからか、途中で読むのを止めようと思ったが、健と人妻の真智(ミラちゃんのお母さん)が仲良くなり始めてからは、なんだか面白くなって、結局最後まで読んでしまった(^^;;健と銀大夫の都々逸合戦とかも(結局シモ!?)。

真智への想いが絶ちきれず、舞台に身が入らない健に、兎一郎は怒った。
「きみは、自分にどれくらい時間が残っていると思う。たいした病気も怪我もせず、存分に長生きしたとしても、あと六十年といったところだぞ。たった六十年だ。それだけの時間で、義太夫の真髄にたどり着く自信があるのか。三百年以上にわたって先人たちが蓄積してきた芸を踏まえ、日々舞台を務め、後進たちに伝承し、自分自身の芸を磨ききる自信と覚悟が、本当にあるのか」

でもね、兎一郎くん。私はこう思うのよ。女に迷うのも修業の一つじゃないんでしょうか。いろんな迷いや弱さを知ってこそ、文楽にたくさん出てくる魅力的なダメ人間たちがわかるというもの。あんたみたいに奥さんを完全放置するより全然良いと思うのですが(笑)。
「金色に輝く仏果などいるものか。成仏なんか絶対にしない。生きて生きて生きて生き抜く。俺が求めるものはあの世にはない。俺の欲するものを仏が与えてくれるはずがない」

タイトルの『仏果を得ず』とは、文楽と共に生きようという、健の高らかな決意表明なのだ。

P.S.
作者の三浦しをんさんは、某新聞の書評を担当しているが、彼女の選ぶ本は、わりと私も読みたいと思うものが多い。もしかして、本の趣味が似てる?

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by june_h | 2008-05-08 20:18 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)