『サクリファイス』 近藤史恵 著 新潮社

日本のプロ自転車ロードレースチームを舞台とした小説。本屋大賞候補、大藪春彦賞受賞作品です。

サクリファイス

近藤 史恵 / 新潮社


スポーツを扱った物語っていうと、天才的な主人公が出てきてあっさり優勝したり、消える魔球(←古い)みたいな現実的じゃない必殺技を駆使して強敵を倒したり、みたいなのが多いんですけどね。この本は、とっても真っ当。
エースの下で働くアシスト選手の苦労と悲哀、レース中の駆け引き、転戦中の生活。それから、選手の引き抜きやドーピング問題などなど、よく取材されていて、ロードレース本来の面白さを上手いこと分かりやすくストーリーに絡ませられています。

ただ、一つだけ現実的じゃなかったのは、主人公、白石誓(チカ)の性格。
いくらアシスト選手とはいえ、自分が勝つことにここまで執着しないプロスポーツ選手って、いるのかな?僕アシストだし・・・・・なんて言いつつ、チームメートに勝ちを譲ろうとしまくり。良い人過ぎて、私もチカの彼女のように、チカをフッてしまうかも(笑)。
でも、なんだかんだ言って、結局ゴールテープを切るのも、欧州のチームに引き抜かれるのも、チカなんだよね~。なんかうまく行き過ぎてムカつくわ~と思う私は、性格が悪いからかしら(^^;実はチカはものすごい策士?だったりして。

この本でも出てきたように、自転車ロードレースのチーム内って、やっぱりドロドロしているものなんでしょうか。エースを勝たせるためなら、アシスト選手がリタイアしようと潰れようと関係ないですからね。エースになる人って、実力もさることながら、人間関係にも、ものすごく気を遣いそうだし、政治力もないと務まらなさそう。

ランス・アームストロングがツール・ド・フランスで7年間勝ち続けるのに、どれだけの名もないアシスト選手が死屍累々と「犠牲」になってきたのか・・・・・とつい読みながら思ってしまう。
「勝利は、ひとりだけのものじゃないんだ」という言葉が、重く響きます。

ツール・ド・フランスを見るたび、私はよく駅伝と比べてしまいます。
どちらも団体競技だけど、駅伝は、一人一人責任が平等で、チームに栄誉が与えられるから、「自分がタスキをつながないと皆に迷惑をかけてしまう」というプレッシャーがある。
一方、ロードレースは、一人一人の役割が決まっていて、栄誉は個人に与えられるから、一握りの選手しか勝利を手に入れられない。
駅伝は日本的で、ロードレースは欧米的だなって、いつも思います。

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by june_h | 2008-05-20 21:14 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)