『月岡芳年の世界』 悳俊彦 著 東京書籍

職場が神保町に移ってから、昼休み、浮世絵専門店で浮世絵を眺めることに、しばらくハマっていました。
歌麿なんかの超有名人から無名の作者まで、数百万円の大作から数百円のレプリカまで、役者絵から春画まで(^^;。
美術館ならお金を払わないと見られませんが、こういうお店なら、タダで、手に取って、好きなだけ楽しめますから♪♪♪
我ながら贅沢なお昼を過ごしていました。

そんな中で出会ったのが、月岡芳年の絵でした。

月岡芳年は、幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師で「最後の浮世絵師」と言われています。
画像が無いので、直接お見せできないのが残念ですが、ネットで「月岡芳年」で画像検索してみてください。
山姥に吊り下げられた半裸の妊婦とか、切断面が妙に生々しい生首とか、内臓ドローン、血がドバーッの切腹シーンとか、エログロ血みどろな絵が、たくさんヒットすると思います(笑)。
彼の絵は「無残絵」と言われていて、江戸川乱歩や三島由紀夫に愛されましたが、芸術的に再評価されている浮世絵の中にあって、キワモノ、B級扱いされています。

でも、私が惹かれたのは、そんな理由ではありません。
それは、ユニークな構図です。

浮世絵は、ぺターンとした平面的なのが多いんですが、芳年の絵は、遠近法なんかが多用されていて、絵の中に時間と空間を感じるんですね。
特に「藤原保昌月下弄笛図」を見たとき「スゴい!絵の中で風が吹いてる!」って驚いたものです。まさしく瞬間を切り取ったというか、永遠の刹那っていうか、「Cool!」なんです。

歴史画や武者絵は劇画チック。少年マンガの表紙になりそうな感じ。日本よりも海外で人気なのは、これが理由なのかも。

美人画にも特徴があります。
彼の描く女性はみんな、不自然なまでに折れ曲がっています。
歌舞伎でも、女形が女性を演じるのに、頭のてっぺんから足先までのラインを大事にするそうですね。刺された後に、海老反りになるシーンとかもありますしね。ラインを作るだけで、一気に女性らしく見える、色気が出てくるんだと思います。

それから気になったのは、彼の絵の中に「春画」がないこと。春画って、性器がズバリと描かれていますが、彼の絵にはそういうのが見当たらない。
浮世絵の春画を見ていると、江戸時代の人って、興味が下腹部オンリーだったのかしらって思っちゃう。今は巨乳とか美乳とか、乳房も立派な「ウリ」だけど、春画で胸がはだけてるっていうのはあんましない。
だから、そういう意味で言うと、昔の人の欲望って単純だったんだなぁと思う。今は、下着とかフェチとかxxモノとか、性的興奮を誘うものが、細分化されているから。

芳年の場合、エクスタシーの対象が性器だったんではなくて、血液とか、残酷なモノとかだったんでしょうね。あの時代では珍しい、アブノーマルな欲望や感情を描いた人だったのかもしれません。


<関連リンク>
月岡芳年(ウィキペディア)

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by june_h | 2008-06-08 14:19 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)