『こころと治癒力―心身医療最前線』 ビル・モイヤーズ 著 草思社

いろいろな示唆に富んだ、良い本でした。
この本は、体だけではなく心の問題も含めて「全体的な」治療や研究に取り組んでいる医師達の対談集です。

こころと治癒力―心身医療最前線

ビル モイヤーズ / 草思社


デカルト以来、医学は、心と体を分けて考えていましたが、だんだんそれが難しくなってきたのですね。健康や病気について考えるとき、心の領域まで踏み込まないと説明できないことが、医学的な研究・実験でもわかってきたのです。

例えば、孤独や抑鬱状態になると、免疫力が下がるということ。
また、多重人格の人は、人格ごとに、アレルギーや糖尿などといった体質まで変わってしまうそうです。
感情が健康に影響を及ぼすということは、経験上なんとなくわかっていたことですが、医学の世界では今まで無視されてきて、最近ようやく研究が始められたようです。
面白いのは、ネガティブな感情がすべて免疫力を下げるかというと、そうではなくて、怒りや悲しみを発散すると免疫力が上がるんだそうです。
一時的にネガティブな状態と、抑鬱状態とは違うのですね。

医者の態度一つで患者の病状に影響することもあります。医者自身が「薬」になったり「毒」になったりします。
また、同じ病気でも、お金持ちと貧乏とか、心配性と楽観的な人とか、患者の生活や性格や環境によって、受け止めかたや位置付け、意味合いが異なってきます。同じ病気の患者を一律に扱うのではなく、患者にとって病気がどういうものか、患者がどうなりたいか、個々に知る必要があると言います。

それから、現代医学のもう一つの大きな問題点として、医者は症状を無くすことには熱心だけど、「健康とは何か」ということは、よくわかってない、ということ。
今まで医者は、病気やネガティブな感情ばかり研究してきて、健康やハッピーな感情については研究してこなかったそうです。
検査結果での数値が「基準値」の範囲内であれば健康では?とも思いますが、基準値はあくまでも統計上の「平均値」であって、その人自身が健康かどうかということを示すものではありません。

現代医学と異なり、多くの代替療法では、治療していく上で、症状や体の一部ではなく、体全体のバランスや調和といった「wholeness(全体性)」を重視します。「wholeness」は、「health(健康)」や「healing(治癒)」の語源でもあります。

病気は症状だけでなく、その人の食生活や生活環境ひっくるめてすべて。症状を無くそうと思ったら、その人自身の生活や気の持ちようから変えていく必要があることもあります。
病気は決して敵ではない、患者自身への警告である、ということがよくわかります。

しかし、こうした研究は、現代医学の主流というわけではありません。薬や医療機器を使わない代替療法は儲かりませんから、お金にならない研究に、企業はお金を出したがりません。また、アメリカでは、一部の代替療法が「違法」ということになっていて、施術すると逮捕されることもあります。

代替療法と一口に行っても、効果が無いのに法外な金額を要求したり、患者の体質に合わない施術をして逆効果を生んだりする場合もありますが、現代医学では改善しない場合の選択肢として、また、現代医学の補完的な治療法として、もっと研究が進むと良いと思います。

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by june_h | 2008-07-22 20:44 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)