「ゆらぐ脳」 池谷 裕二、木村 俊介 著 文藝春秋

脳科学の第一人者、池谷裕二さんの本です。
科学は合理的なもの、というイメージがありますが、著者の語るところによると、なかなかそうとも言い切れなくなってきていることがわかります。

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著者は、従来の脳科学の枠にとらわれない、ユニークなスタンスをとっています。
まずは「部分に分解せず、全体を見る」
科学的に分析すると言うと、組織から細胞、細胞から分子、分子から原子・・・・・のように、細分化していく傾向が強いのですが、彼は、敢えてそうせず、脳全体の動きをダイナミックにとらえようとしています。

それから「仮説を立てない」。
この姿勢は「仮説ありき」の従来の科学では考えられないことです。いわば、出たとこ勝負で実験をするわけです。
仮説や結論を決めて物事を見ると、自分の都合の良いものしか見えなくなる可能性があるし、ひどい場合は実験結果を捏造することにもなりかねないからです。

彼は「脳には再現性が無い」と言います。つまり、インプットが同じものでも、アウトプットがいつも同じとは限らない・・・・・1+1の答えが、いつも2であるとは限らないということ。これこそが、人間の想像性の源だと言います。

また、著者は、学者達の世界についても語っています。「人間らしい」「人間臭い」という言葉は、科学からほど遠いイメージですが、脳神経学界も、脳神経学者自身も、なかなか「人間臭い」ようです。

学者達の評価は、世界的に有名な科学雑誌である「ネイチャー」や「サイエンス」に、論文が掲載されるかどうかで決まります。裏では、論文に掲載されるための学者間の駆け引きや、激しい研究費の争奪戦が行われているようです。掲載されると、学者仲間からの激しい嫉妬や中傷に遭うこともあります。

学界で生き抜くためには、とにもかくにも「プレゼンテーション能力」「コミュニケーション能力」が必要だと著者は言います。理系だからって、英語や作文がヘタですなんて、言っていられません(笑)。「象牙の塔」に籠って、ひたすら研究に没頭する学者は「ダメな学者」なんだそうです。現在は、研究のスピードが速いので、積極的にほかの研究者達とコンタクトを取らないと、遅
れていってしまうのです。著者自身も、研究データをインターネットで公開しています。

科学的に説明できないことは信じない、なんて言う人がいますが、そういう人に限って、科学がよくわかっていなかったりします。科学だってまだまだ道半ば。これからもいろいろな発見があって、現在の常識は百年後の非常識になるかもしれません。

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by june_h | 2008-11-10 21:03 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)