『キュア』 田口ランディ 著 朝日新聞社

フィクションを読むのは苦手な私だが、面白くて一気に読んでしまった。

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賢明な医者ならわかってしまうのだろう。自分たちが日頃行っている「治療」というものが「自分がされたくないことを他人にしている行為」なんだということを。
この本の主人公、斐川もその一人だった。
優秀な癌治療医の彼は、自身の体が末期癌に侵されていると知ったとき、自分が行ってきた検査と治療を受けることを、一切拒否するという選択をした。
いたずらに延命するだけの医療方針に、常日頃から疑問を持っていたのと、自分の「尊厳」を守るため。

だが、自分の身体が間近な死をはらんでいる恐怖と戸惑いは変わらない。
「人は生きる権利があるのだろうか。生きる権利とは死ぬ義務によって保障されたものだ。人間は死ぬ義務がある。誰も生き続けてはいけない。だからみんな死ぬんだ」

セックスも、彼が毎晩見る悪夢も、死の恐怖から必死に逃れているような切迫感があって、なんともやるせない。

彼には、人を癒す不思議な力があって、手術にも無意識に使っていた。彼の執刀を受けた患者は治りが早いが、それと引き換えに彼自身の心身は、ダメージを受ける。

霊能力を持った看護士、テレパシーで語りかける未熟児、末期癌が治癒してしまった民間療法の指導者・・・・・彼を取り巻く人達も、非現実的な設定だが、彼らを通して見えてくるのは、現代医学の問題点とターミナルケアの難しさ、そして、命とは何かという、答えの無い問い。

著者は、代替医療について、かなり取材しているようだった。そして、最後から4ページ目に、やはりあの単語が出てきた。
「まな子さんはミネラルを求め、山に入り、植物や鉱物、時には土をもって帰って来て、自分なりに研究していました。ホメオパシーや、漢方の勉強も続けています」


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by june_h | 2009-01-11 10:32 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)