【ネタバレあり】NODA・MAP第14回公演「パイパー」@Bunkamuraシアターコクーン

相変わらず野田秀樹の舞台は生々しい。「赤鬼」の舞台を観た後のように、帰り道かなりヨレヨレ。激しく消耗。

私が野田秀樹の舞台を観たいと思うのは、たぶん「恐いもの見たさ」なんだろうと思います。
だってたぶん、どんなホラーよりスプラッタより生々しいから。人の血肉より恐ろしいのは、自分自身の内面だって、いつも目の前に、耳元に、突きつけられるんだから。

この前読んだ小説「キュア」の主人公の医者も「内臓を見るのが好きだ。ほっとする」って言ってたけど、そのフェティッシュな気持ち、私もわかります(笑)。別に、肉屋で興奮したりしませんが、要は「本物を感じるから」なんだよね。何もかも隠している表面の皮膚がウソっぽくて、食べ物溶かしたり、バイ菌殺したり、生々しいことやってる体内の方が本物の人間なんじゃないかしらって。この演劇もそんな感じ。

幸せって何だろう?生きるってなんだろう?って言葉を使うと、なんだか陳腐だけど、主人公の姉妹は、真っ正面に、その意味を探そうとしていました。

口汚く世界を呪い、人を罵る姉と。何でも無防備に受け入れてしまう妹と。人を食べても、生きずにはいられない姉と。人として子供を生まずにはいられない妹と。どちらも呆れるほど、愛おしいほど、人間らしい姿。
そして、希望も絶望も同じ、人間の妄想だと言いつつも、絶望的な世界の中で、希望を抱かずにはいられない二人。

「口の中にずっと残ってる」
「何が?」
「人間・・・・・であること」
というセリフ、なんて素晴らしいんだろうと思います。

ジェノサイドのあと、残った母子(姉妹?)の言葉の掛け合いシーンは圧巻。なぜって、自己憐憫も感傷も徹底的に排除して、無機物の単語だけで凄惨な「生々しさ」を描いてみせているから。
「愛」って言葉を使わずに「愛」を表現するのと、どっちが難しいかしら・・・・・。
これぞ、野田秀樹の真骨頂!って思いました。

宮沢りえと松たか子の豪華共演!も楽しみでした。宮沢りえ、舞台だと声が全然違うんですね。あの細い体から出ているとは思えない太い声。ビックリしました。カッコよかったです!

もう一つ楽しみにしていたのは、近藤良平さんをはじめとしたコンドルズの皆さん。一度彼らを観たいと思っていたのです。パイパー軍団を熱演(冷演?)していましたが、体の動きはきっと、彼らの意見が取り入れられているに違いありません。

キレイに生きているように見える人間ほど実は、えげつないことをやっている。多かれ少なかれ、生きていれば直接人の血肉を食べていなくても、人の命をお金に換えるようなことをしている。

これは遠い未来の話ではない。欺瞞に満ちた、2009年に生きる人間を、そして、世界を描いた舞台です。


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by june_h | 2009-01-24 18:11 | 観劇 観戦 コンサート レポート | Trackback | Comments(0)