高校野球「裏」ビジネス 軍司貞則 著 筑摩書房

高校野球を見ていると、いつも思う。
スタンドで応援する人の中に、マウンドで戦っている選手と同じユニフォームを着た、たくさんの部員たち。中には、ベンチ入りしている選手の十倍くらいいるのではないかと思うほど、スタンドの一角を埋め尽くしている学校もある。

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彼らの中には、3年生もいるだろう。でも、ほとんどの選手が、甲子園で戦うことはおろか、レギュラーにもなれずに卒業していくのだろう。

某強豪私立高校の中には、県予選を勝ち抜くために、県内の有力選手をかき集めて他校の牙を抜き、本当に欲しい選手は、全国から集めてくる。他校ならレギュラーになれたかもしれないい多くの選手は、3年間「飼い殺し」に。

そこには「生徒のための学舎」という姿は無い。学校経営のために甲子園で知名度を上げるという学校側の都合しかない。

部員たちは高校から、いや、もっと小さいときから、野球という名のビジネスに翻弄される。

この本で特に指摘されているのは、ボーイズリーグの存在と役割だ。特に、甲子園周辺、大阪や兵庫のボーイズリーグは、全国各地の強豪高やプロ球団の人材供給源になっている。ボーイズリーグの監督には、それらへの太いパイプがある。もちろん、多額のお金も絡んでいる。入団会見で華々しくインタビューされている選手の陰には、選手と球団を取り持つ監督や「ブローカー」がいる。

著者は、監督やブローカーを糾弾しているわけではない。問題の本質は、選手を使い捨てにし、その後の生活や年金を保証しないプロの球団経営にあるという。食いつめる選手がいるから、子供たちを食い物にする人が出てくるということだ。

もちろん、中には、良心的に子供たちを教えている人もいる。
ダルビッシュや田中将大がボーイズリーグからプロ入りするまでの過程も描かれている。

私が興味を持ったのは、新聞沙汰になることもある、強豪校での後輩いじめ。
いじめを起こす部員は大抵、レギュラーになれない3年生らしい。希望の持てなくなった部活動で、はけ口として後輩いじめにはしるのかもしれない。

小さいときから始まっている、実力の世界。有力選手のためには、球団や学校は財力を惜しまない一方、結果が出せない選手はクビだ。

お金と人が集まるところがドロドロしてしまうのは世の常だと私は思う。
勝敗がはっきり決まるスポーツの世界が実力主義になるのは当然だ。ただ、スポーツを大人の都合で利用し過ぎて、スポーツの魅力を削いでしまうようなお金の使い方をすると、選手にも、観客にも、経営者にも損だ。

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by june_h | 2009-02-14 19:48 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)