オウム真理教教祖 麻原彰晃の三女のエッセイ。
マスコミにも「アーチャリー」という名で、たびたび登場していたので、ご存知の方も多いと思います。

止まった時計 麻原彰晃の三女・アーチャリーの手記

松本 麗華 / 講談社


私の「アーチャリー」に対するイメージは、ワガママで尊大。
小さい時から、教祖の娘の中で一番可愛がられ、信者達に「最終解脱者」として神や仏の如く崇め奉られてきた存在。

でも、実際の彼女は、ごく普通の女の子。
父親が大好きだけど、なかなか会えない。
幹部とは名ばかりで何もできない。
御付きの信者に囲まれてはいたけれど、不安と寂しさを抱えながらの幼少期でした。

彼女の人生が大きく変わったのは、父親の逮捕。
以降、教団内部は混乱し、彼女も家族も、一時的に記憶を失うほどの出来事が、次々と襲ってきます。

家族や他の教団幹部達は、彼女の名を語って、信者達を動かそうとしました。
教祖が一番目をかけていた「アーチャリー」の言うことならば、信者は従うからです。

彼女が望んだのは、教団の中での特別な存在としての自分ではなく、実社会でのごく普通の生活でした。
当たり前のように学校に通い、仕事をする。
しかし、「オウム真理教の幹部」である彼女には、非常に困難でした。
合格した学校に入学拒否され、バイトもクビになる。
そんなことが繰り返し起こりました。

以前、四女のエッセイ『私はなぜ麻原彰晃の娘に生まれてしまったのか』を読んだことがありますが、その本とは事実が食い違う部分もあります。

何が善いとか悪いとか、ウソかホントかとか、全部置いておいて、彼女が体験している出来事と、それに対する彼女の感情だけを考えると、なんて苛酷な人生なんだろうと思います。

そんな人生の中でも、彼女を親身になって支えてくれた信者や、学校の友達、弁護士がいたわけで。

教団幹部だった彼女は、一生、公安の監視から逃れられないそうです。
現在、彼女は、オウム真理教の被害に遭った人達の手記を読んだりして、教団が起こしたことに向き合っています。
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by june_h | 2016-01-24 11:44 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)

一瞬、手に取ろうか迷う表紙ですが(笑)、イスラム教や、現在のアラブ諸国の実情が分かりやすく書かれていました。
そして、中田先生の生い立ちも。
手に取って良かったです(^^;

私はなぜイスラーム教徒になったのか

中田考 / 太田出版


中田先生は、母方が神主の家系なんですね。
どの宗教を学ぼうか迷っていたそうですが、「論理的整合性がある」という理由でイスラム教に決定。
東京大学文学部のイスラム学1期生で、後にイスラム教に入信しました。

エジプトに留学した際、やはり、ムスリムになった日本人女性と結婚。
先生は、現地のムスリムと交流していく中、「論理的整合性がある」ということで、サラフィー主義に傾倒していきます。

一口にイスラム教と言っても、いろいろな派閥や考え方に分かれています。
大きく分けて、スンナ派とシーア派がありますが、それぞれの派閥も、いろいろ分かれているようです。
私がイスラム教徒に生まれていたら、スーフィズムにハマるかも(^^;

サラフィー主義は、過激な思想に通じるということで、危険視されているようですが、先生の家に出入りしていたサラフィー主義の若者は、精神性が日本の侍のよう。
清烈な生き方に目頭が熱くなりました。

先生は、言います。
「自分が世界を見ている枠組みそのものを疑わないと、長い時間をかけてアラビア語を学んでも、同じものしか見えないんです。」

日本人は、欧米的(特にアメリカ)の見方が染み付いてしまっていて、
「欧米は自由で優れていて、中東は抑圧的で劣っている」
ということを、学者すら信じて疑わないんですよね。

民主主義と言っても、実際に行われているのは、制限選挙寡頭制だし(^^;
見方が固定されていると、新しい価値は見えて来ないと先生は言います。

先生の言葉を読んでいて、大学時代のアラビア語の授業のことを思い出します。
私がよく、頭の悪い質問をして、チュニジア人の先生に
「常識を疑いなさい。常に問題意識を持ちなさい」
と、言っていましたから。

最後に、先生の学生達が何人か、先生の印象を語っていました。

「研究の緻密さと普段の生活のギャップがすごい」
先生の部屋は散らかっていて、パソコンの使い方もよくわかっていないらしい(^^;
それから、プロレスとかマンガとかお好きなんですよね。

先生の奥さんの香織さんは、同じく研究者でしたが、亡くなられたんですよね。
香織さんの著書を読んで、中田先生を訪ねて来た女子学生に、先生は、こう言いました。

「自分は妻がどこへ行ったかずっと考えていた。でも、あなたは知識という形で妻の命が続いていることに気づかせてくれた。だから、あなたを同志社大学の最後の生徒として責任を持ってイスラームを教えます」

泣けました。
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by june_h | 2015-10-21 09:19 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)

アラブ社会の書籍や雑誌に掲載された人生相談を集めた本。

イスラム世界の人生相談―ニュースの裏側がよくわかる

太陽出版


日本の人生相談は、著名人や作家、医師、カウンセラーなどが回答することが多いのです。
アラブ社会では、イスラム法学者が、コーランやイスラム法に照らして回答します。

他の宗教でも共通の悩みだと思いますが、現代のテクノロジーやライフスタイルに、数百年~千年以上前に成立した教義を、どう解釈して当てはめるのかは、かなりの問題。

性転換手術はNGとか。
人工受精はOKだけど、夫以外の精子と受精させるのはNGとか。

立ち会い出産はOK。
「妻の下腹部を見るのに抵抗がある男性もいるようですが、「ムハンマドは妻と一緒に入浴した」という記述があるので問題ありません」
という具合。

恋愛・結婚に関しては、男性と女性では、できることが全然違います。
イスラム教徒の男性が4人まで妻を持てるのは有名ですが、女性は1人の夫としか結婚できません。
ちなみに、預言者ムハンマドは、妻が9人いたそうです。
男女の別の他に「預言者ルール」というものが、特別に存在するそうです(^^;

女性の権利が制限されているイスラム教なら、そういう答えになるだろうねぇと、一応納得できる回答が多かったのですが、その中で、どうしても納得できないものが。

「友達に嘘をついてしまいました」
という相談に対して、イスラム教が嘘を認める例外的ケースが解説されていました。

例外の一つとして
「複数の妻を持つ夫が、妻一人一人から「一番愛しているのは誰か」と詰め寄られた場合、全員に対して個別に「お前を一番愛している」と嘘をついてもよい」

というケースがありましたが、私は到底納得できません(`へ´)

だってこれ、後々、絶対バレるじゃん(^^;
旦那が取り繕うためなら、妻達が血ミドロの争いを繰り広げてもイイってことなんでしょうか!?
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by june_h | 2014-06-01 12:21 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)

ジャーナリスト田原総一朗と、元オウム真理教信者で「ひかりの輪」代表の上祐史浩の対談。
タイトルに対して「おまえが言うか!?」と、思わず突っ込み(^^;

(008)危険な宗教の見分け方 (ポプラ新書)

田原総一朗 / ポプラ社


上祐氏は、元々、早稲田大学を卒業し、宇宙開発事業団に入社したエリートだが、会社組織の中では、結局、歯車の一つでしかなかった。
「ワン・オブ・ゼム(大勢の中の一人)」になりたくなかった彼に、麻原は、特別な存在であるという自尊心を与え、彼も麻原に傾倒していく。

しかし、盲目的な崇拝を求める麻原に、上祐氏は、グルとして彼を敬愛しつつも、心のどこかで従えなかった。
次第に、麻原と麻原の家族達は、上祐氏を疎んじ、遠ざけていった。

上祐氏は、麻原と、彼を取り巻く信者達の関係を、次のように分析している。

"強い霊媒体質で時々なにかを言い当てられれば、信者の前に本人自身が、自分を絶対視しかねません。実際には誇大妄想ですが、そのために、たびたび周りを振り回す行動をとる。
自尊心が非常に高いから、自分を認めない者には強い反感を抱き、被害妄想にも陥る。誇大妄想と被害妄想。こうなると、客観的には、精神的な問題を抱えていると言わざるを得ない。
ともかく、言動が非常に不安定で、良いことも悪いことも、そこから何が展開されるかわからない。麻原は、常にそんな状態だったと思います。"


"僕を含め、疑問を感じた者はいたと思います。しかし、その教えが説かれる前の段階で、麻原の与える神秘体験や麻原の霊能力を過大視し、麻原を高く評価してしまっていました。さらにヴァジラヤーナ(金剛乗)の教えでは、修行を早く進めるには、グルに対して無思考に従うことが重要だと説かれていました。グルの知恵は弟子には計り知れず、その言動が不合理に見えても、それに対して弟子が自分の考え方で疑問を持てば、エゴが増大して修行が進まない。それは、グルが弟子に与える精神的な訓練だと考えられていたんです。"

麻原は、自分の権威と自己肯定感を高めるために、権威を積極的に活用した。
多額の寄付をして、ダライ・ラマ法王やロシアの要人に会っている。

"他人へのマインドコントロールが、自分のマインドコントロールになるというのはあります。また他人を引き込む力は、自分が信じれば信じるほど強くなる。自分が確信を持って話すと、信者の反応も違う。"

麻原は、世界の終末を予言して、信者達をコントロールしていた。
ついには、その予言を実現するために、テロを計画・実行。
この後の顛末は、日本のみならず、世界中が知るところとなった。

そして、話はタイトルに戻る。
「危険な宗教の見分け方とは?」

"特定の神様や人を絶対視するほど、どこかで歪み、弊害や危険性が出てくるのだと思います(上祐氏)。"

この定義なら、オウム真理教のみならず、世界中の宗教が当てはまる。
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by june_h | 2014-05-28 12:02 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)

最近、町山智浩さんの映画評論にガンガン触れています。

松嶋×町山 未公開映画を観る本

町山 智浩 / 集英社


「面白い」「新しい視点をくれる」という、私がエンタメに求める2大要素を満たしてくれるからです!
作品そのものだけでなく、キャスティングや配給会社の裏事情、セリフにこめられた社会的背景、シーンの元ネタ、監督の生い立ちや思想、出演俳優のスキャンダルや下ネタ等々、多角的に紹介してくれます。

あと、作品の魅力をきちんと語っている点。
これって当たり前なことですけど、なかなかできないみたい。
自分の知識をひけらかすだけだったり、的外れな批評をしたり。
ひどい人は、作品を見ずに勝手なことを言っていたり(^^;

そして、町山さん自身が気に入った作品なら、どんなにマイナーでも無名でも、語り倒すこと!
人気とか興業収入とかに左右されず、自分の感性で伝えているから信用できます。
誰もが知っている映画をけなすこともあります(^^;
時々、想いが強過ぎて暴走することもあります(^^;;;

・・・・・前置きが長くなりましたが、この本では、TOKYO MXで放送されていた番組『松嶋×町山 未公開映画を観るTV』での内容がまとめられています。
日本では未公開の、アメリカのドキュメンタリー映画を紹介していた番組でした。

グローバル企業による世界の水利権の独占を描いた『Flow』。
アメリカの石油メジャーによるアマゾンの環境破壊を描いた『CRUDE』。

グローバリズムや環境問題もありますが、宗教絡みの映画も多いです。

子供達をキリスト教原理主義者に洗脳するキャンプを取材した『Jesus Camp』。
カトリック神父による性的虐待と、それを隠蔽したバチカンの欺瞞を暴いた『Deliver Us from Evil』。
コメディアンが、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教をおちょくる旅を描いた『Religulous』。

アメリカでは、キリスト教保守派が、生活や政治に大きな影響を与えていますが、日本では馴染みがないので、公開されないのでしょう。

私が興味を持ったのは、アーミッシュの生活を描いた『Devil's Playground』。
アーミッシュとは、キリスト教の一派で、18世紀の生活を続けるスイス系ドイツ人のコミュニティ。
非常に禁欲的で質素な生活をしています。
16歳から「ルムシュプリンガ(ラムスプリンガ:rumspringa)」とよばれる時期があります。
この期間は、コミュニティを離れて、普段は禁止されている酒やタバコ、ディスコなど、何をやっても許されます。
期間が終わると、コミュニティに戻るか、外の世界に出るか、選ぶことができますが、9割がコミュニティに戻ります。

どんなにドンチャン騒ぎや悪さをしても、飽きてしまうからだそうです(^^;

残りの1割は、外の世界に仕事と可能性を見つけた子供達か、ルムシュプリンガ中に悪さをしなかった子供達です。
子供達に自主的な選択権を与えているんですね。

興収が見込めないということで、これらの映画が日本で公開されないのは、残念です。
日本では、ある程度宗教に無頓着でも生活できますが、他国や国際情勢は、宗教を知らないと理解できないことが多々あるからです。

これらの映画には、ニュースだけではわからないことがたくさん詰まっています。
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by june_h | 2014-05-18 12:48 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)

この映画は実話です。

カトリックの強いアイルランドでは、結婚前の女性が妊娠すると、修道院に入れられました。
そして、囚人のように扱われ、強制労働に従事。
出産した子供は、彼女達から引き離され、アメリカに養子として売られていました。
こんなことが、1996年まで続いていたんだそうです。

この映画の主人公フィロミナは、修道院に入れられていた女性の一人でした。

50年後、引き離された息子アンソニーを探すことを決心したフィロミナは、ジャーナリストのマーティンに一緒に探すように頼みます。
フィロミナとマーティンがたどり着いた真実は、非常に数奇なものでした。

アンソニーは、残念ながら既に亡くなっていました。
マイケルと名前を変えていたアンソニーは、レーガン&ブッシュ大統領の法律顧問として活躍。
同性愛者だったため子供は残していませんでした。

「アンソニーは、私を愛していたのか、憎んでいたのか」

このことだけが気がかりだったフィロミナは、アンソニーのパートナーだった男性に会いに行きます。
彼が持っていたアンソニーの記録映像に、その答えはありました。

アンソニーは、母親を探しに修道院を訪れていたのです。
そして、本人の強い希望で、修道院に葬られていました。

私は、涙が止まりませんでした。

「事実は小説より奇なり」
と言いますが、シナリオライターが神様なら、「マジ神!」って思います(^^;

フィロミナとアンソニーは、離れていても、形は違えど、同じ「カルマ」を持っていたということになります。

フィロミナは、未婚で快楽に溺れたということに罪悪感を持ち、50年間隠し続けた。
アンソニーは、ゲイであることに罪悪感を持ち、生涯隠し続けた。

しかも、アンソニーが法律顧問を務めた共和党政府は、抗エイズ新薬開発を妨害していた。
なぜなら、キリスト教系保守派のロビー団体が、「エイズはゲイの天罰」だと考えていたから。
アンソニーは、自分の首を絞めるような政策をサポートして、結局、エイズで亡くなった・・・・・。
二人とも、宗教的な問題で抑圧されていたのです。

二人が生前、ついに出会えなかったのは、修道院のシスターがお互いのことを隠していたからです。
シスターは、フィロミナに言いました。

「私は神に近づくために、生涯、純潔を貫いた。でも、あなたは快楽に溺れた。これは天罰よ」

・・・・・「堕落」した女性達の労働と、子供達を売ったお金でご飯を食べていることについては、どう思っているんだろうって、突っ込みたくなりますが(^^;

でも、二人の愛情と絆までは、裂くことはできなかったのです。

フィロミナは、重たい秘密を抱えているとは思えないほど、とても魅力的な人物でした。
無教養ではありますが、素直で、信心深くて、超ポジティブ!
ジャーナリストのマーティンは、反対に、神を信じていなくて、オクスフォード大卒のエリートで皮肉屋。
この「でこぼこコンビ」っぷりが良かったです。

アンソニーは、たまたま息子であることが判明しましたが、修道院から売られた子供達の多くは、いまだに行方知れずなのです・・・・・。
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by june_h | 2014-04-04 12:26 | 映画 感想 | Trackback | Comments(0)

臨済宗僧侶で芥川賞作家の玄侑宗久さんと、浄土真宗僧侶の釈先生との対談。
ちなみに、タイトルは「じねんをいきる」と読みます。

自然を生きる

玄侑 宗久,釈 徹宗/東京書籍

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釈先生、AVの監督と対談したことがあったらしく、

「日本のAVは世界一。ありとあらゆる欲望に対応しているから。たとえ中国に脅されたとしても、AVの輸出を止めれば、中国は、あっという間に困るでしょう」
だそうな(^^;

玄侑さんも
「どうして日本人は「いく」というのでしょう。英語も中国語も「来る」なのに。「往生」と関係あるのでは?」

・・・・・お坊さん二人が、一体何の話をしているんでしょう(^^;

釈先生は、浄土真宗のお坊さんなのに、
親鸞さんが現代にいたら友達にならないと思うんです。苦悩ぶりがすごいでしょ(笑)。
とミもフタもないことを仰っていて、電車の中で大笑いしそうになりました(^^;

確かに、求道者とか宗教者とか哲学者とか、素晴らしい方々とは思うのですが、友達や家族や恋人だったらめんどくさそうです(笑)。

そうだなー。私だったら、どうせお友達になるんだったら、蓮如さんの方がいいかもなー。
誰からも好かれて人望も厚かったみたいだし、子供もたくさんいたみたいだし(笑)。

・・・・・こんな話ばかりではなくて、神道における道教の影響とか、仏教の東西の違いとか、ちゃんとマジメな話もしています。

あと、なんでも効率と便利さとグローバリズムを追う現在、敢えて閉じて不便さを共有することが大切なのでは、という話が印象的でした。

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by june_h | 2014-01-11 12:29 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)

エホバの証人(ものみの塔)の元信者による、入信から脱会までの記録。
宗教団体とは何かというだけでなく、コミュニティの在り方や個人のアイデンティティについて、いろいろ考えさせられました。

ドアの向こうのカルト ---9歳から35歳まで過ごしたエホバの証人の記録

佐藤 典雅/河出書房新社

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父親が銀行員だったため、転勤で海外を転々としていた著者の家族。
ロサンゼルスに住んでいた時、聖書の勉強をしませんか?と、エホバの証人信者が家に訪ねて来ます。

元々、プロテスタント信者で、理想主義的だった母親は、海外での淋しさも手伝って、エホバの証人の教義こそ真理だわ!と入信。活動にのめりこんでいきました。
熱心な母親の布教によって、著者を含む家族や親戚達も、入信していきます。

エホバの証人は、アメリカ人のチャールズ・テイズ・ラッセルが1884に起こした宗教。
(ちなみに、信者達は「教祖がいないし偶像崇拝しないので宗教ではない」と考えています)
キリスト教の聖書を絶対とする、原理主義的な方針を取っています。

あらゆる欲望に否定的なので、エホバと聖書の名において、厳しく抑圧的にしつける母親に対して、著者は、小さい時から家出するなど反抗していました。
また、実生活より布教活動が奨励されていたため、大学進学を断念せざるを得ませんでした。

いろいろ葛藤する一方、非常に優秀だった著者は、日本人ではなかなか入ることができない、アメリカ本部の中枢「ベテル」の一員に。
信者達の尊敬を一身に集める存在となりましたが、支配的に振る舞う女性信者に楯突いたことがきっかけで、ベテルを追い出されてしまいます。

元々、教義の矛盾に疑問を持っていた著者。
二つの大きな教義の突然の変更(高等教育の容認とハルマゲドン(世界滅亡日)の延期)が、疑問に拍車をかけました。

「入信しないと幸せになれない。
信者以外はサタンの手下。
信者だけがハルマゲドンの後に楽園に入れる」
と子供の時から繰り返し教えられてきました。

しかし、入信したことで一家離散した信者を見て、入信しない方が幸せだったんじゃないかと思ったり。
信者ではなくても、立派な人がいると感じたり。
むしろ、狂信的で病的で依存的な信者達に悩まされることの方が多かったり(^^;

とうとう、彼は、

「こんな非常識な信者達と楽園に行ったって、全然嬉しくない」

と考えるに至って脱会。
家族や親戚をどんどん説得して、辞めさせていきました。

この本から私が感じたのは、「カルトなんて、エホバの証人なんてロクでもない!」
ということではなく、著者自身のアイデンティティの問題でした。

たぶん著者は、どんな宗教に入っていたって、同じように矛盾を感じ、それをそのまま放っておけなかったのではないでしょうか。

宗教に限らず、学校だって会社だって自治体だって、あらゆるコミュニティは、矛盾を孕んでいます。
だって、運営している人間自体が矛盾を抱えた生き物だから、人間に合わせると、どうしたって矛盾は出てきますからね。

彼は、頭が良い上に、ちゃんと自分の頭で考えて行動し、バランスの取れた考え方ができる人だという印象を受けました。
でも、組織は「考えないでとにかく従いなさい」という部分があります。
上役の人は「使いにくい」と思うのかも。
社長タイプかな。
実際、脱会後のビジネスで、彼は、成功しています。

今でも、仕事で愚痴を言う若者に
「一度カルトに入ったら?今の生活のありがたみが分かるよ」
と、冗談混じりに言うそうな(^^;

私が問題だと思うのは、欲望を必要以上に抑えこむこと。
エホバの証人の教えは禁欲的なので、反発して脱会すると、ホストのような極端な世界に走りやすいそうです。
また、どんなコミュニティでも、激しく批判するのは、内部事情を知っている人間ですね(^^;;;

「人生の答えを他の人に委ねた瞬間、自分の人生はなくなってしまう」

と、著者は言います。
こう考えると、カルト信者でなくても、自分の人生を生きていない人、結構いるのでは?

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by june_h | 2013-12-15 12:50 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(2)

内田先生の対談本は数多くあれど、「歩きながら対談した」というのは、なかなかないでしょう(^^;
どうやって記録したんだろ?
ピンマイクでも付けていたのかな?

内田先生と浄土真宗僧侶の釈先生が、大阪・京都・奈良の「聖地」を巡りながら対談した本です。

聖地巡礼 ビギニング

内田 樹 / 東京書籍


この本で紹介されている場所で、私が行ったことのある場所は、大阪の四天王寺、京都の清水寺、奈良の大神神社くらいかな。
大阪の生國魂神社には、ぜひ行ってみたいですね。伊勢神宮より古いそうな。
内田先生は、身体感覚が優れているので、場のエネルギーをすぐに感じるようですね。

釈先生の仏教や寺社にまつわるうんちく話が面白いです。
三輪名物「三輪素麺」の価格は、神様が決める(くじ引き)とか(^^;

あと、日本人の「神」に対するメンタリティの話が興味深かったです。
日本人は昔から、おかしな形の岩だったり、スゴい能力を持っている人間に対しても「神」と呼ぶそうです。
なので、最近の若い人が
「マジ神なんだけど!」
と連呼するのは、日本人のDNAに刻まれている感受性的に正しいということになりますね(^^;

パワースポットブームやらクールジャパンやらで、寺社が見直されている一方、無造作に「聖地」が壊されている現状もあるわけで。
京都に古墳があったそうですが、携帯電話会社が基地局を建てたせいで、破壊されたらしい。
こんなムチャクチャなことって、あるんですね・・・・・。

寺社巡りをするなら、釈先生みたいなお坊さんにガイドしてもらいたいな(^^)
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by june_h | 2013-11-25 15:41 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)

著者が火を点けた「ゆるキャラブーム」のルーツは仏像!?
みうらじゅんさんと仏教の、深くて明るい関係がわかる本です。

マイ仏教 (新潮新書)

みうらじゅん / 新潮社


みうらじゅんさんは、小学4年生の時、お祖父さんに連れられて京都の東寺に行き、仏像のトリコに。
仏像の絵を描いたり、写真集や仏像を集めたりするだけでは飽きたらず、挙げ句の果てには、寺の瓦まで盗む始末(^^;
自分が大事にしていた仏像を壊してしまって「諸行無常」を感じたり(^^;;;

高校も仏教系を選んで進学。夢は、住職になること。
自分が寺の息子に生まれなかったことを嘆く日々でしたが、ある日、ハタと気付いたのです。
仏教マニアでは、女の子にモテないと。
それからしばらくは、仏教から距離を置き、ロックに走るのですが、ボブ・ディランやビートルズの楽曲に、仏教の影響を見出すのです。

とにかく、彼の日頃の生活や考えを見ていると、その辺のお坊さんより、仏教を実践しているように見えます。
「形に捕らわれない」ということを学んでいる人生なのではないでしょうか。

「仏教」というと、暗くて重々しくて古臭くて堅苦しいイメージですが、身近なんだと感じさせてくれました。
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by june_h | 2013-09-27 12:02 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)