「忙しいという字は、心を亡くすと書きますね。
忘れるという字も、心を亡くすと書きますね。
ゆっくりと奥様と心を取り戻す旅行に行かれたらいかがですか?」

こんなふうに、耳が聴こえないため筆談で接客する、銀座の人気ホステス、里恵さんのエッセイです。

筆談ホステス

斉藤里恵 / 光文社


赤ん坊のとき、髄膜炎が原因で、耳がまったく聴こえなくなった里恵さん。
「聴覚障害者」としてではなく、健常者の中でも生きていけるようにと、厳しく接する母親に耐え兼ねて、反抗や家出を繰り返し、高校を中退。やがて、ホステスの世界に。

言葉巧みに客との駆け引きを楽しむ夜の銀座。耳が聴こえないのは、大きなハンデキャップですが、彼女にしかできない「筆談」で、お客さんの心をとらえていきます。
「アルファベットと恋愛の順は違うので、まずはお隣のI(愛)についてお話ししましょ。それがない方とはH(エッチ)なお話はできません」

「少し止まると書いて『歩』く。着実に前に進んでいます」

彼女の筆談は、こんなふうにウィットに富んでいます。
ときには、絵を描いたり、漢字クイズを出したり。
筆談ならではのコミュニケーションですね。

読んでいて思ったのは、とにかく彼女は強い!
自分が「障害者」という意識は、まったく感じません。
耳が聴こえないことで、意地悪されるなど、辛い目にもたくさん遭ってきましたが、逆に、そのことを生きる力に変える強さを持っています。
「人の夢と書いて儚いとは言うけれど、だからこそ人は夢を次々に追い求めるのでは」

元々は、生活するためにホステスの道に入った彼女ですが、今は大きな夢を持って、仕事をしています。
「「辛」いのは「幸」せになる途中ですよ」


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by june_h | 2009-11-12 20:32 | 本 読書 書評 | Trackback(1) | Comments(0)