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『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』 安田 節子 著 平凡社

私は、この本を読みながらずっと、宮崎駿の漫画『シュナの旅』を思い浮かべていました。
自分たちで作物を育てない人間達は、「神人」に多くの人間を捧げるのと引き換えに、決して芽を出さない「死んだ」穀物を受け取ってパンにして暮らしていました。
でも、この話はフィクションではなく、今まさに、私達の現実世界で起こっていることなんだとわかります。
自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する
農家は毎年、バイオ企業から種を買わないと作物を育てられません。
なぜなら、遺伝子組み換えによって、その種が育つのは一世代だけ。おのずと毒素を出して、次の世代の種を殺してしまうからなのです。
また、この種は、ある特定の農薬にだけ耐性を持つように「改良」されているので、農家は、種と農薬をセットで、永遠に買い続けなければならないのです。

しかも、アメリカでは、自家増殖で作物を育てる農家を見つけ出しては、企業が「特許侵害」で訴え、多額の賠償金を求める始末。零細農家は次々と廃業せざるをえない。
こうでなくても、地球温暖化や環境汚染で、穀物の収穫量は減っている。
短期的な利益ばかり追求していては、土壌や作物や人間自身を疲弊させるばかり。こんなことを続ければ、私達の子孫は、苦労することになるでしょう。

日本だって例外ではありません。
日本は特に、食糧自給率が先進国でダントツに低く、海外からの輸入に頼らなければならない。
そのため、農薬の基準は低いし、他国の農政に左右されるリスクがとても高い。世界中で資源の争奪戦が繰り広げられているのに、資源の無い日本はイニシアチブが取れない。ミニマムアクセス米の問題とか、聞いていて腹の立つことばかりです。

シュナは、ギリシャ神話のプロメテウスが神の世界から火を持ち帰ったが如く、「生きた」種を求めて、神人の砦に忍びこみ、種を持ち出すことに成功します。そして、黄金の穂が輝く風景を取り戻します。

現実世界のシュナは、私達一人一人。
食に対する感謝の気持ちを持ちつつ、消費者が安全な食品に対する「目」を持って選択しなければ、ツケはいずれ自分たちが払うことになるでしょう・・・・・そんなわけで、有機栽培米を買ってみた私。
シュナの旅シュナの旅

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by june_h | 2009-07-26 20:18 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)