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シス・カンパニー公演「ベッジ・パードン」(2、3回目 役者&脚本家編)@世田谷パブリックシアター

いろいろ縁あって、3回も見てしまった「ベッジ・パードン」。

1回目は、舞台に近い席だったので、屋根裏?のベッジの部屋がよく見えませんでしたが、2、3回目はバッチリ!
しかも、ちゃんと、部屋の暖炉の煙が、屋根の煙突から出ていたのですね!そんでもって、キンノスケがひきこもって暖炉を使っていないときは、煙が出ていない・・・・・細かい。

パンフレットの売上がすべて震災募金になるということで、ガラにもなく、パンフを買いました。
そんなわけで、今回は、ちょっと深く語ります。


■キンノスケ:野村萬斎
遠くから見て、つくづく思ってしまいました。
・・・・・萬斎さんって、日本人体型だなぁ(^^;

今回の舞台は、もっとシリアスなものになるハズだったのですが、震災との兼ね合いで、ラブストーリーも含めた少々ライトなものに落ち着いたんだそうです。
シリアスな舞台、それはそれで、見てみたいですね!
なんたって、ドロドロにシリアスな芝居ばかりやってきた萬斎さんだもの。絶対それでも良かったと思うの。
・・・・・でも、私には、今回の芝居は、十分シリアスでしたけど(^^;;;


■ベッジ(アニー・ペリン):深津絵里
私が注目したのは、ソータローがキンノスケの手紙を隠していたことがバレるシーン。

1回目は、ソータローがキンノスケに自分のコンプレックスをぶつける、二人のやりとりしか見ていませんでした。

2回目は、二人がやりあっている最中に、キンノスケの妻からの手紙をベッジが集めて、キンノスケのテーブルにそっと置くのが見えました。
私は、ちょっとムカつきました。
いくらなんでも、イイオンナ過ぎるだろ!男に都合が良すぎるだろ!奥さんからの手紙を破り捨てることもできたのに、って。

でも、3回目に見たときは、ベッジが手紙を集めた後、暖炉に近づいてうろたえているのが見えました。
・・・・・もしかして、奥さんからの手紙を燃やそうとしたのかな?
頭がタリナイとバカにされても「気にしない」と、いつも答えるベッジだけど、ちゃんと傷ついているし、嫉妬もしているの。
ベッジも普通の女性だったんだって、ちょっと安心しました。

・・・・・まぁでも、キンノスケには、彼女の気持ちは、一生分からないと思うけど(^^;


■ソータロー:大泉洋
大泉さんは、三谷さんにとって、「ジャック・レモン→西田敏行→西村雅彦」ラインなんだそうです!
それってスゴいじゃん!陰陽どっちもできて、三谷さんの芝居にとって、なくてはならないキャラってコトじゃない!?
でも、この芝居では、浅野さんに、オイシイ所をかなり持っていかれていると気づいたのでしょうか。
見るたびに、浅野さんに負けないとばかりに、大泉さんの細かいリアクションが増えていっていたような気がします(^^;;;


■グリムズビー:浦井健治
「エリザベート」のルドルフ皇太子役だったのですね!
どうりで、お歌がお上手なハズです。

グリムズビーとキンノスケとの会話
「おめぇは、アイツ(ソータロー)が好きか?」
「ソータローさんは、良い人です」
「良いヤツって、なんだ?」
「世話を焼いてくれるからです」
「世話を焼くのが、良い人か?」
というやりとりは、キンノスケとベッジの関係を暗示していたのですね。

今回の芝居では、「H」音が脱落するコックニー訛りが、重要なキーポイントですが、「H」が脱落するのは、フランス語や韓国語もなんですよね。
韓国人の友達が「ニオンジン(日本人)」と言っていたことを思い出しました。


■その他11役:浅野和之
パンフレットで経歴を見ていたところ、「夢の遊民社」にいらしたこともあるし、『恐れを知らぬ川上音二郎一座』で、麻薬中毒で死ぬ女形を演じた方だったんですね!自分の記憶を巻き戻したところ、確かに声が同じでした(笑)。
ネットで調べてみると、ドラマ『Jin』にも出演なさっていたし、名バイプレイヤーなんですねー。
今回は、そりゃもう大活躍でして。


■脚本&演出:三谷幸喜
三谷さんは、パンフレットで語っていました。
「星の王子さま」の有名な一節「大切なものは目に見えない」という言葉が嫌いで。今回台詞にも書いたけれど、大切なら、見えないまでも言葉にはすべきだと思うんです。言わなければ人には分からない、言葉にしなければ本当の気持ちは伝わらない。僕が49年間生きて来て学んだ、そんなこともこの作品には反映されています。

セリフでは、旦那に逃げられた大家さんが、
「不満があるなら口にすればいいのに」
と言っておきながら、ベッジを褒めたことがないとキンノスケに指摘され
「大事なことは、口に出さなくとも伝わります!」
と逆ギレ。
でも、キンノスケが更に
「大事だからこそ、口に出して伝えなければならないのではないですか?」
というところですね。

三谷さんの言葉と、この芝居を見ていて気づいたことがありました。

私は思えば「大切なことは、黙っていても伝わる」って「思想」に、結構、今まで傷ついてきたのですよね。
裏返せば「黙ってても伝わらないということは、本当の関係ではない」って、相手も私も思っていたこと。

だから、私は、一生懸命になって、相手の顔色を伺って理解しようと頑張ったけど、うまくできなくて、相手も私を責めるし、私も私を責めた。
それで、疲れて終わりにしてしまう。そんなことの繰り返しでした。

でも、お互いに、口と耳と言葉があるのだから、言えば良かったんだよね。
「あなたの考えていることが分からないから教えて」って。だって、超能力者じゃないんだもん。

でもね、裏返せば私も相手に「説明しなくても、私のことを分かって欲しい」と望んでいたのですよね。甘えてたなあ。

・・・・・この年になるまで、こんな簡単なことが解らなかったなんて(^^;
そもそも、人の顔色を読むなんて、「空気読まない」私には無理だったんだよ(笑)。

今度、誰かと付き合うなら、上手にケンカして上手に仲直りできる人がイイな・・・・・なんて、芝いの感想から、エラいところに話が逸れてしまったなぁ。
by june_h | 2011-06-29 12:59 | 観劇 観戦 コンサート レポート | Trackback | Comments(0)