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木を植えた男。フレデリック・バック展@東京都現代美術館

「木を植えた男」のアニメを作った作者 フレデリック・バックの展覧会です。
見ごたえがあって、感動した、素晴らしい展覧会でした!
木を植えた男。フレデリック・バック木を植えた男。フレデリック・バック
会場の入口を抜けると、まず「木を植えた男」のアニメが上映されています。
一人の羊飼いの男が、一生をかけて1万本の木を植え、豊かな自然と生活を取り戻す・・・・・。
以前、テレビのドキュメンタリーか何かで、このアニメを見たことがあったので、粗筋は知っていましたが、今回の展覧会で、このアニメの背景に、第一次世界大戦による人間精神と環境の荒廃があったことを知りました。

つくづく思いますが、偉大ということは、大きいとか、お金があるとか、頭がいいとか、力があるとかではなく、日々の生活を重ねていくこと、継続していくことなのだと。
昔は、家事を「生産性の無い仕事」だと思っていましたが、人の命を支える家事こそ、偉大な仕事だと思っています。

「木を植える男」によく似た話を思い出しました。
「まんが日本昔ばなし」で、男と老婆の明暗を分けた話があります。
男は、自分が所有する山の木を次々と切り倒して売り払い、大金持ちになっていました。
老婆は、自分が所有する山の木を守るため、ひたすら下草を刈って手入れし、質素な生活をしていました。

男は老婆をバカにしていましたが、ある日、大雨が降ったとき、男の山は、ハゲ山になっていたので、土砂崩れが起き、男の家を押し潰してしまいました。
老婆の山は、木の根が土砂をガッチリ守って、石一つ崩れませんでした・・・・・。

バックさんは、いわゆるヨーロッパの「アルザス地方」育ち。ヨーロッパで戦争があるたびに、周辺国の間で取ったり取られたりされてきた地域です。彼の生まれも、作品に影響していたのかもしれません。

バックさんは、パリで美術を学んだ後、カナダに渡り、現地の女性と結婚。生活のために、イベントポスターやステンドグラス製作など、いろいろなメディアの仕事をします。
アニメ製作もその中の一つでした。

普通、アニメのセル画は、透明なセルに絵の具で色を塗っていきますが、バックさんのアニメは、ツヤ消しの半透明のセルに色鉛筆で塗っていきます。
そのため、独特の柔らかさや、流れるような動きがあり、アニメ中の人物や背景が、生まれては消え、生まれては消え・・・・・人や世界の命の流れをそのまま写し取ったかのようです。

カナダやヨーロッパの風景を描いた膨大な絵も展示されていました。
特に、ネイティブカナディアンやイヌイット達の生活を描いた絵が印象的。バックさんの絵は、多神教的で、自然をとても大切にしているようなのは、彼らの思想の影響が間違えなくあります。

見終わって、胸がいっぱいになりました。
私は、美術展でグッズを購入することは、ほとんど無いのですが、珍しく一筆箋を購入。ウキウキしながら帰ったのでした(^^)

by june_h | 2011-09-21 18:54 | 美術展 展覧会 | Trackback | Comments(0)