2012年 12月 02日
「心を軽くする言葉」 小林正観 著 イースト・プレス
この本で、印象に残ったのは、二つの話。
まず、良寛さん。
良寛さんは、周囲の人達から、大変慕われているお坊さんでしたが、渡し舟の船頭は、そんな良寛さんを妬み、いつか酷い目に遭わせてやろうと思っていました。
ある日、良寛さんが、船頭の渡し舟に乗りました。
船頭は、チャンスとばかりに、良寛さんを川に突き落とし、頃合いを見計らって、良寛さんを引き上げました。
良寛さんは、船頭にこう言いました。
「助けてくださってありがとうございます。あなたは命の恩人です」
船頭は、ハッとして、その後、改心したそうです。
実は、良寛さんは、船頭が自分を良く思っていないことを知っていました。
しかし、良寛さんは、憎しみを返すのではなく、愛を返したのです。
もう一つは、新潟の旧家の話です。
明治時代、この旧家は、敷地内に庭園のための丘を作りました。
専門の職人に頼めば数か月でできるのに、村中の老若男女に少しずつ頼んで、数年かけて作りました。
実は、当時、酷い飢饉で、人々は困窮。
しかし、村人達は、この丘造りの賃金で、飢えることはなかったのです。
この旧家は、蔵の中が空になるまで続けたそうですが、没落することは、ありませんでした。
投げたものは、返ってくる。
投げないものは、返ってこない。
許す者は、許される。
許さないものは、許されない。
そんな言葉の意味が、よくわかりました。