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「善き書店員」 木村俊介 著 ミシマ社

書店員6人のインタビュー集。

善き書店員

木村俊介 / ミシマ社


私は、買い物好きの母と妹に
「どうして、デパートとかショッピングモールとかで、真っ直ぐ歩けないの!?」
と、ブチ切れるが(笑)、私は、本屋の中では、真っ直ぐ歩けない(^^;
デパートやらショッピングモールやらは、30分で具合が悪くなるが、本屋なら、何時間でもいられる。

なので、本屋でバイトすることが、小さい時からの私の夢だった。
結局、その夢は叶わなかったが、本屋は、大変な仕事なのだと、大人になるにつれて分かっていった。

あるベテラン書店員は
「書店員は、地を這うような仕事」
だと、言ったという。

大量の新刊本を並べ、返品する本を荷造りし直す。
これだけでも重労働。

拘束時間も長い。
本の定価の2割しか入らないので、薄利で安月給。

それに加えて、インターネットの台頭で、昨今の書店を取り巻く環境は厳しい。

Amazonなどのネットショッピングサイトでの購入が増加。
インターネットで情報を得られるので、本や雑誌自体も売れなくなってきている。
リアル店舗の書店は、どんどん潰れている。大型店も厳しい。

この本に登場する書店員は、仕事ができる人ばかりだが、閉店やリストラを経験した人も少なくない。
離職率も高いという。

憧れだけでは報われない。
好きなだけでは過酷過ぎる。

そんな環境で、彼らは、なぜ、書店員を続けてこられたのか。

「自分がやるべきこと」を見つけた人。
「自分がやらなければならない」と思えた人。
そんな人達が「残って」いるように思う。

地域の活性化のため。
本と人とを繋ぐため。
親から受け継いだ書店を潰さぬため。

「ミッション」は、それぞれだが、ギリギリの状況で、皆、毎日、戦っている。
一人一人が毎日戦っているから、書店が、社会が成り立っている。

毎日、幸せでハッピーなだけではない。
試行錯誤して、のたうち回って、「棚」に本が並べられていく。

最後に、あとがきに紹介されているクリエーター箭内道彦さんの言葉を。

「精神的なきつさがあったとしても、負け続けられる、それが許されてるって贅沢な状態ですよね。
人は通常、負けられるほど暇じゃないってなっていくから。

でも、一方で勝ちって何だろうとも思う。
人は何かに負けたまま終わるから。

甲子園でも大阪桐蔭以外はみんな負ける。
その大阪桐蔭の藤浪くんもプロでは負ける。
だから、勝たなきゃだめって言うよりは、毎日、何かには負けるというのが生きることなんじゃないか。
負けた姿や痕跡が、それぞれその人にしか作れない作品なんじゃないか」
by june_h | 2014-09-03 12:18 | 本 読書 書評 | Trackback | Comments(0)