光嶋さんによる内田先生の建築中の道場「凱風館」の紹介
光嶋:六甲山が見える。「公共性がある建物」というリクエストだった。
道場は、能舞台もある。先生の奥様のため。
三つの庭を使って、それぞれの空間に光と風を入れる。それぞれの建物に屋根がある。
セミパブリックスペースがある(サロン、書斎(先生が本を書くところ)、宴会場、客間)
構造には80cmのカラ松を8本入れる。
山・土・木の物語を入れる。木は、この人が育てた、みたいな。
能舞台のための老松を描く。この絵も制作中。
玄関には淡路島の瓦。


内田:かなり変わった建物です。道場兼自宅なんです。私は家に客を招くのが好きです。
3LDKの家に60人きちゃったりする。
麻雀連盟の人も来て、4卓くらいできる。だから、基本は道場だけど、60人入る宴会場にしてもらった。
パブリック・セミパブリック・プライベート空間が一つの建物に入っている。切れ目があるけど緩やかにつながっている建物。細かいところは光嶋君にお任せする、と言った。
家の中か外かわからない路地とかがある家を提案してもらった。路地の感じが好き。
子供が走り回って喜ぶ空間になると思う。なかなかそういうコンセプトで作る家ってないと思うから。
土地や建物を「所有する」という考え方には基本的に反対。いろんな人に使ってほしいと思う。だから「自分の家を持つ」というつもりはぜんぜんなかった。


ツイッターに寄せられた質問:エネルギー問題について
内田:エネルギーは、環境負荷がかからないものが望ましい。
もう少し、農業従事者の割合を戻したほうがいい。都市ではなく田舎をめざそう。
今の世代でなんとかしないと、何百年もかけて先祖からもらってきた伝統なんかの「贈り物」が、途絶えてしまう。今の一次産業は、儲かるからではなく、高齢者が、自分たちがやめたら終わってしまうという意識からやっている。そこをなんとかサポートしなければならない。
人間にはハーバーという機能がある。冒険に行く人と、送り出す・待つ人と。全員がフロントラインにつくことはない。後ろでサポートする人も必要。全員でフロントラインに行くと、すぐにつぶれてしまう。もっと「縁の下の力持ち」を評価すべき。


挙手による質問:コミュニケーションを妨げるのは、「こだわり」と「プライド」と「被害妄想」。でも、建築家は、それらを強く持っている気がします(笑)。
コミュニケーションと建築家に対するアドバイスをお願いします。


内田:光嶋君に何をいっても「そうですね」といってくれるところがいい(笑)。
自分のリクエストに合わせて瞬間的に戦略をかえてくれるところ。否定してもぜんぜん「ええ!?」とか言わない。だから言いやすい。
奥さんと自分が違うことをいっても、どちらにも「そうですね」というから、苦労してるだろうな(笑)。
コミュニケーション能力は、自分の意見を伝えるのではなく、折り合いを柔らかく柔軟にすることでしょう。


挙手による質問:邪悪なものにあったときの対処法は?


内田:一つは、放電。体内にためないで放電すること。基本は受け流す。
もう一つは、怒るべきときには怒る。どうにもならないことに対して、この怒りには個人的な怒りではないと思うときがある。そういうときは、怒りに任せてしまう。「怒髪天を突く」ような超自然的な怒りをする。
危機的状況を生き残るために必要なこと。
いつも穏やかでニコニコしているけど、ここってときには全身で怒る。


光嶋:内田先生の周りには、雑多で多様な人が集まっている。これは、先生が秩序を作っているから。秩序なき多様性は成り立たない。みんな「幼なじみ」みたい雰囲気になるのは、先生という秩序があるからだと思う。
先生はいつもニコニコしているけど、きっと怒らせちゃいけないのかなと思う(笑)。


街場の建築論まとめ
内田:「マイナスワン感」が大事。
建物だけで完結しちゃいけない。
人が住んで初めて完成するような建物でないと。
いろんなライフスタイル・趣味趣向・性格をもった人が住んで初めて生きてくるような建築がいい。
今の建物はあまりにも完成し過ぎている。モデルルームの状態が一番いいというのはおかしい。「人が住んだら終わりだよね」っていう建築はおかしい。
人が住む、人が関わるのが想像できるような建物がいい。


私は、内田先生の考え方で
「言葉も商売もコミュニケーション。すべては相手への贈り物。相手に何かを贈りたいという気持ちから、すべては始まった」
っていうのが、一番好きです。

言葉は、相手を傷つけるためではなく、喜ばせるもの。
商売は、相手から奪うためではなく、相手に与えるもの。
与えあって、連綿と続いてきたこと。すべては、先祖からの贈り物。それを同じように子孫に伝えることが、今生きている私達がすべきこと・・・・・。

凱風館、出来上がりが楽しみですね!


JIA建築セミナー2011「街場の建築論」内田樹×光嶋裕介 特別公開講座@JIA館 その1
JIA建築セミナー2011「街場の建築論」内田樹×光嶋裕介 特別公開講座 その2

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by june_h | 2011-07-12 12:51 | 観劇 観戦 コンサート レポート | Trackback | Comments(0)

(セミナーつづき)
内田:人間が暮らしていくのに重要なのは、サイズの問題。
払っている税金が、目に見える形で何に使われているのか、貢献や達成感が見えないとだめ。だから、もっと小さくないとだめ。
共同体も建物もシステムも、今の日本は大きすぎる。小さくしないと、メンバーシップが見えてこない。
地震など危機的な問題があったときに、隣の人が誰だかわからないと大変。

光嶋:都市型の理想的な共同体とは?

内田:今までの社会システムは市場原理。金で買う。だから金を稼ぐ必要がある。
ネットで物を安全に買え、隣の人がわからなくてもやっていける社会は、今までの歴史でとても特殊だった。
貧しくて人とのつながりが大切な社会は、お金で買えない。
本来なら、商品として売り買いされるべきでない、公共的に共同体で作り上げなければならないものまで商品化してきた。人間関係とかシステムとか。だから、それを再構築しなければならない。そのためには、お金のやりとりを追い出さなければならない。手足を使って汗をかいて作らなければならない。
でも、実現が難しい地域がある。
本当の共同体は、先祖からの贈り物が脈々とあるもの。先祖から贈り物を受けとり、子孫へ伝えていくことが脈々とあるところは、つながりが強い。マンションの町内会とかは、物語や歴史がない。「使命感」「義務感」がないから難しい。利便性だけのつながりでは共同体はできない。

光嶋:日本はスクラップ&ビルドが激しくて、共同体存続は難しいのでは?

内田:西本願寺の建物はおもしろい。職人さんたちの遊び心が見えるから。この建物がずっと残ると思って作っているから。でも、今の建築には、そういうのがないよね。数十年のスパンでしかみていないよね。地震国だからとか言い訳しているから?数十年スパンなら、建て替えたら儲かるから?

光嶋:不動産的には、土地だけに価値があって、建物には価値がない。

内田:バブルの時は、建てても使わずに壊したりしたよね。投機のために、住まずに転売してたよね。そのときに建築業界のモラルがおかしくなったのでは?

光嶋:これから復興していくうえで、どんな建築にすればよいのか?

内田:町づくりとか都市計画とかって言葉はキライ。町って作るもんじゃないでしょ?町をつくるなんて傲慢。町って自然発生的に「できる」もんなんだよ。
人間が「こうありき」ってのに当てはめるのはおかしい。
長くたっている建物は、その建物に建つための必然性があった。
10世紀からある神社がある。それは、神社が「合う」土地だったから。人と異世界をつなぐ所とか。「場」自体が合う建物を引き寄せる。こういう建物は、長く続く。

光嶋:今の日本は病んでいるから、人間のいろいろなセンサーがオフになっている。魅力的な建築を作ることで、センサーを復活できるのでは?

内田:町づくりで、百貨店とかマンションとか作ろう!ってんじゃなくて、大仏を作ったら?お金をかけずに寄付で。ガウディの教会みたいに100年くらいかけて。市場原理を入れたらだめだよ。仕事帰りにふと見上げたら、大仏のお顔が見えて、思わず拝んでしまう、みたいな。
こういうのって、建築家から提案しないと。
建築家は、目に見えないものにも気を使わないとだめだと思う。町自体が持っている力ってあるでしょ?
江戸城は、朱雀門の位置が90度横になっている。90度、都と違う設計になっている。気を回すように作られている。
汐見坂と富士見坂のお店は繁盛した。下ったところに東京湾が見え、上ったところに富士山が見える場所。でも、町づくりとか言っている人は、そういうの、あんまりわかっていない。

光嶋:でも、クライアントに「霊的に良い土地だから」とか言っちゃうと、引いちゃう人もいます。
数値化したり具体的な説明をしないと納得してもらえない。目に見えることだけで、そのことを説得するのは、難しい。

内田:身体的な感覚で「あー、ここに何か作りたい」っていう建築家の感覚はとてもいいと思うけど。
細部まで一元的に決めるのはよくない。全部最初から決めないで、細かい所は現場で、臨機応変に。

光嶋:完璧な入れ歯がないように、完璧な建築はない。時間がたったら、どんどん状況も変化していくものだから。という説明をしてほしい。

内田:「入れ歯が合わない」人は、何個を作っても合わない。歯に合わせて咀嚼を変える人は、入れ歯が合う。なかなか合わない人は、何がきても同じような噛み方をする。
「結婚は入れ歯のようなものです」と、よく自分も結婚式でスピーチする(笑)。

(つづく)

JIA建築セミナー2011「街場の建築論」内田樹×光嶋裕介 特別公開講座@JIA館 その1
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by june_h | 2011-07-11 18:16 | 観劇 観戦 コンサート レポート | Trackback | Comments(0)

内田樹先生と、先生の建築中の道場「凱風館」の設計者である光嶋裕介さんとの対談です。

スゴく良かったです。
2時間があっという間でした。
もう2年前くらいからずっと、ナマ内田樹先生を体験したいと思っていたのです。やっと念願が叶いました!
内田先生は、話すことを前もってお決めにならず、対談相手やその場の雰囲気によって、どの引き出しが開くかは、わからない方。
なので、ライブを体験してみたかったのですよ!

思った通り、柔らかだけど、芯のある話し方。
良い意味で、話し方にムダがありません。
これは、対談本編集者にとっても、かなり本にしやすいタイプ(笑)。
どうりで、先生の本がたくさん出るはずです(^^;

建築関係者や学生のみならず、先生のファンもたくさん聴講しに来ていました。

いくつか気になった話を・・・・・。
日本人は、わかっていてもやめられない。
痛い目をみないと方向転換できない。
途中で微調整するということができない。
ある時点から、わざとシステムを壊す方向に舵を取る。早く壊してリセットして、作り変えようとする。
太平洋戦争末期も、同じ現象が起こった。

今回の地震が、日本の大きな転換点となることは間違いない。
都市と田舎・人と自然の2極化や、都市一局集中から、分散化、分権化、横のつながりが強くなっていくだろう。
中央集権のオフコンから、ネットワークでつながる非集中型・離散型のパソコンになったように。

また、今回の報道で、東北の近代化が遅れていたことがわかっただろう。
そして、多くのハイテク部品が作られていたことを知って「東北に工場があったんだ!」ということがわかった。

(つづく)
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by june_h | 2011-07-10 22:10 | 観劇 観戦 コンサート レポート | Trackback | Comments(0)